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2026-10-02

【第4回車いす世界選手権】銀メダルを振り返る 団長・監督・スタッフのコメント

チームを支えた5人が語る世界選手権


第4回IHF車いすハンドボール世界選手権(9月16日〜20日、スペイン・グラノリェース)で、車いすハンドボール日本代表は銀メダルを獲得しました。国際ハンドボール連盟(IHF)が主催する世界選手権で日本がメダルを手にしたのは、すべてのカテゴリーを通じて初めてです。

選手とともに戦った団長、監督、スタッフに、アンケート形式で今大会を振り返ってもらいました。選手の言葉は別の記事で紹介しています。

安藤裕一団長
「『金メダル』が、明確な次の目標となりました」
銀メダルの受け止め
日本の技術、戦術、そしてチーム力が、いずれも世界で高い水準にあることを示すことができました。これは選手、スタッフはもちろん、チームを応援し支えてくださったすべての方々の力が結集したからこそ獲得できたもので、すべてのみなさんに感謝しています。そして「金メダル」が、明確な次の目標となりました。
今回のチームをどう見ていたか
車いすハンドボールは、障害の程度が異なる選手が一緒にプレーするため、それぞれの役割を理解し、互いの力を生かすことがとても重要な競技です。今回の日本代表は、コート上だけでなく、コートの外でも役割を考え、自ら行動できる自立したチームでした。「優勝」という目標に向かい、チームのために汗を流すことを惜しまない一方で、「プレーとチームの一員であることを楽しむ」ことも忘れない。その二つのバランスが、とてもよく取れたチームだと思って見ていました。
銀メダルにつながった一番の要因
2年前の世界選手権での経験をはじめ、技術や戦術、チームづくりなど、さまざまな要因があったと思います。ただ、あえて一つだけ挙げるとすれば、選手、スタッフ一人ひとりの「魂」だったと思います。「車いすハンドボールを応援してくださる方々の期待に応えたい」「この経験を自分たち自身の未来にもつなげていきたい」。そうした「魂」を、日頃の取り組みから大会の最後まで大切に持ち続けたことが、今回の銀メダルにつながったのだと思います。
今回の結果が持つ意味
日本の車いすハンドボールが、国内外から注目されるきっかけになったと思います。国内では、メディアなどで取り上げられる機会が増えることで、競技を知ってもらう機会が広がります。海外からも日本代表への関心が高まり、日本での合宿や試合など、国際交流の機会が増えることにつながると考えています。外国のチームから、来日したいという提案を実際に受けています。
これから、そして応援してくださったみなさんへ
車いすハンドボールの魅力が多くの方に伝わり、体験できる機会が全国に広がっていくことを期待しています。パラアスリートの練習環境は、まだ十分に整っているとは言えません。競技を体験したい人も、高いレベルを目指したい選手たちも、手軽に練習や試合ができる環境が整うことを願っています。みなさんの応援があったからこそ、日本代表は世界選手権で銀メダルを獲得することができました。次は金メダルを目指します。同時に、このスポーツを通して、障害の有無にかかわらず、誰もが希望を持ち、人生を楽しむことのできる社会の実現に向けて、メッセージを発信し続けていきたいと思います。

大西満監督
「一つの到達点ではなく、さらに発展させるためのきっかけに」
銀メダルの受け止め
銀メダルという結果は、選手たちがこれまで積み重ねてきた努力と、チームとして困難を乗り越えてきた歩みが形になったものだと受け止めています。2024年の5位から一段階上がり、世界のトップレベルで戦えるところまで成長できたことを誇りに思います。
チームが成長した部分
個々の技術だけでなく、試合中に状況を読み、選手同士が声を掛け合いながら、瞬時に判断、修正する力が大きく成長しました。特に、戦術統括コーチとともに取り組んだ攻守の切り替えや、失点やミスを引きずらず次のプレーに集中する「チームとしてのメンタリティ」が身についたと感じています。
戦術とチームづくりのポイント
日本の強みである車いす操作のスピードや敏捷性を生かし、トランジションを軸に攻守の切り替えを徹底しました。また、相手国の戦術パターンに対して、選手それぞれのクラスや特徴に応じた役割を明確にし、メリットだけでなくリスクも共有したうえで、チーム全体で判断、修正できる組織づくりを進めました。
日本代表の強みと課題
強みは、車いす操作の技術、スピードや敏捷性、そして選手が状況を理解して連動できる戦術的な柔軟性です。一方で、選手層、とりわけ女子選手の確保や、クラスごとの選手層の厚さにはまだ課題があり、継続的な選手の発掘、育成と、コンディショニングの充実が必要です。
これから、そして応援してくださったみなさんへ
今回の銀メダルを一つの到達点ではなく、日本の車いすハンドボールをさらに発展させるためのきっかけにしたいと考えています。応援してくださったみなさんへの感謝を力に、競技を知ってくれる人、プレーしたいと思う人、そして新しいチームが一つでも多く増えるよう、選手、スタッフ一丸となって取り組んでいきます。

選手とハイタッチを交わす松本コーチ

松本賢コーチ
「世界一を目指して、強化と普及を同時に」
銀メダルの受け止め
IHF主催の世界大会で、日本ハンドボール界史上初となる銀メダルの獲得は、本当に嬉しいです。戦術統括コーチとして、ファイナルに進めた喜びと、世界一に導けなかった悔しさを感じています。
担当した役割
各国の分析と対策、試合の指揮と采配です。
日本代表の強み
大西監督の、日本代表選手団すべてに対するマネジメント力。選手の疲労とけがに対するケアを毎日してくれた安田さんの存在。総務・通訳としてIHF関係者との調整にあたり、ロストバゲージした競技車を探し出してくれた岡田さんの存在。そして、選手の離脱に対応してくれた安藤団長の存在です。おかげで、試合に集中することができました。
印象に残っている場面
競技車が届かなければ大会棄権となる危機を、回避できたときです。
これから、そして応援してくださったみなさんへ
世界選手権銀メダル獲得の情報をさらに広め、引き続き世界一を目指して、強化と普及を同時に継続していきます。

試合後、古矢選手をねぎらう安田トレーナー

安田孝志トレーナー
「コートに立ち続けられたことが、TEAM JAPANの強みです」
銀メダルの受け止め
誇らしく思います。世界一に一歩届かなかったという悔しさはありますが、選手の頑張りをたたえたいと思います。
日本代表の強み
チームワークです。度重なる苦難がありました。すべてクリアし、コートに立ち続けられたことが、TEAM JAPANの強みです。
印象に残っている場面
準々決勝のエジプト戦です。前回のエジプト大会のリベンジを果たしたときの、チームの高揚感は忘れられません。
これから、そして応援してくださったみなさんへ
今後、何が起きても対応できる準備ができました。次回大会では、選手には試合のみに集中してもらえるよう、スタッフ一同、サポート体制を整えてまいります。大会に出場できたのも、2位になれたのも、応援してくださったみなさまのおかげです。心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

選手とスタッフで円陣を組む日本代表

岡田美優通訳・総務
「2位という結果は、レベルアップする良いきっかけ」
銀メダルの受け止め
金メダルが見えていたからこそ、試合終了直後はとても悔しい思いでした。しかし、改めて振り返ると、2位という結果は、ここからまた日本代表チームがレベルアップする良いきっかけになったと、前向きに捉えています。
担当した役割
渡航前は、ユニフォームや航空券、保険の手配、旅程の作成、JHAやIHFとの連絡調整などを担当しました。大会期間中は、移動時のガイド、通訳、ロストバゲージへの対応、テクニカルミーティングへの出席、クラス分けへの対応、毎日のスケジュール調整、試合のスカウティングなどです。
日本代表の強み
得点力の高い4点の選手が3名いるため選手層が厚く、誰か1人の調子が悪くても、ほかの選手が点を取ってくれます。キャプテンの森谷選手はキーパーとしても実力が高く、攻守ともにチームを支える精神的支柱でした。2点の永田選手、3点の伊藤選手はディフェンスだけでなくシュートも打てるため、相手にとっては穴がなく、守りづらかったのではないかと思います。そして何より、松本コーチが相手チームの映像を何度も見て分析し、試合ごとに緻密な戦術を練って、選手と認識をすり合わせながら共有していたことも強みです。
印象に残っている場面
準々決勝のエジプト戦の最後のセットを、1点差で勝利した場面です。エジプトのマグディ選手は攻撃力、守備力ともに世界最高レベルで、圧倒される場面もありました。それでも選手は、組織的なディフェンスでマグディ選手をゴールエリアに近づけない気迫の守りを見せてくれました。得点を全員で積み重ねて勝利した場面は、一生忘れないと思います。
スカウティングへの挑戦
今回は、試合中のスコアや戦術データを集めるスカウティングにも挑戦しました。車いすハンドボール専用の分析ソフトはまだ存在していないので、独自に戦術分析アプリを開発しました。最初は単純なシュート成功率やアシスト、ターンオーバーの数しか記録できませんでしたが、試合でスコアをつけていく過程で、少しずつ改善していきました。次の世界選手権までには、ユニットごとの攻撃成功率やシュートコースのデータも収集できるよう、開発を進めようと思います。
これから、そして応援してくださったみなさんへ
今大会は初日からトラブル続きで、自分の力不足を痛感する大会でした。ただ、反省と同時に、2年先に向けて自分がすべきこと、改善できることも見えています。チームを送り出してくれた日本車椅子ハンドボール連盟のみなさま、クラウドファンディングで支援してくださったみなさま、YouTubeや現地で応援してくださったファンのみなさま、大会を運営してくださったIHFやスペインハンドボール連盟のみなさま、本当にありがとうございました。また2年後に向けて、努力を続けてまいります。