1 はじめに
2000年をむかえ、日本ハンドボール協会はナショナルトレーニングシステム
(以下NTS)を新設し、若年層からナショナルチームまでの一貫指導を実施
します。
このシステムは、優秀なアスリートの発掘・育成・強化活動を実施すると共
に、指導の一貫性を図ることによる指導者の育成、さらには各地区の地域に新
しいハンドボール情報を伝達していくシステムです。本年から第1回がスター
トする訳ですが、ハンドボール界の関係の皆様のご理解と絶大なるご支援・ご
協力がなんと申し上げても必要であります。運営に関しては、課題が多いこと
も承知しておりますので、皆様からのご意見・ご指摘をいただきながらじっく
りと構築していくことが重要なポイントであると考えております。日本ハンド
ボール界が21世紀にはオリンピック・世界選手権大会での常連国になる「夢」
を抱き、実現に向かって皆様のご支援をよろしくお願いいたします。次にNT
S新設についての背景を述べます。
2 若年層の強化とナショナルチーム
(1)日本のハンドボールは、男女ともオリンピック・世界選手権の出場を果
たし、アジアのリーダーシップをとってきた。しかし、1988年のソウルオ
リンピックを契機に、その座を韓国に明け渡すようになった。
(2)韓国のみならず、アラブ諸国はジュニア層強化に相当の投資を実施し、
その成果は顕著である。
(3)世界では、ヨーロッパ勢が相変わらず強さを発揮している。スウェーデ
ン、フランス、スペインなどの国が勢いを増している。各国とも強化は、
長期的な計画に基づいたものであった。アフリカでは、優秀なコーチをヨ
ーロッパから招聘し、将来世界で戦える選手の育成に着眼点をおいた結果、
エジプトがジュニアの世界チャンピオンになった。現在では、エジプトは
世界選手権・オリンピックの常連国になっている。
3 長期的な展望に立った選手の育成
(1)世界の強豪国は、国の協会が主体性を発揮し、常に「世界のハンドボー
ルが今どうなっているのか?」を意識し、若年層からナショナルチームま
で、強化・育成について一つの考え方を示し、独自のスタイルを形成して
強化を進めている。
(2)従って、特定の選手のみを集中的に強化しているわけではなく、運動能
力の高い選手を低年齢時代から幅広く発掘し、その中から優秀な選手を編
成していくシステムをとっている。
(3)ハンドボール選手として必要な要素は、技術・戦術・体力・精神力の4
つである。それぞれの要素を育成していくには、8〜18歳の発育段階で
「その質・量」の与え方で大きく変化していく。この時期に最高の指導を
受けたか否かで、大人になってからのパーフォーマンスが大きく異なって
いく。
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→ |
技術・戦術・体力・精神力 が整っている |
↑
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→ |
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→ |
質的・量的に良い刺激を受 ける |
4 基本の重要性
世界の強豪国は、体力・技術・戦術に長けているが、これは、若年層時代に
いかに「質の高い」指導を受けたかの証である。日本のハンドボールの課題は、
どんな選手でも、誰でもできるようなこと、簡単にできるであろう事、つまり
ハンドボールの「基本的な技術・戦術」の完成度である。
実戦で、瞬時に戦況を把握し、速く強く正確に効果的にプレーできるかが、
基本的な「質」であり、世界を相手にした場合、その「質」の差で勝敗が決ま
るのである。
5 今後の日本ハンドボール界の強化と若年層の育成
1998年4月より、下記の新体制で強化を推進している。この4チームの成功・
日本リーグ・学生・高校それぞれのチームの強化・成功が当然必要だが、同時
に若年層から、協会が主体となった一貫指導を実施していくことを忘れてはな
らない。したがって、世界で活躍できる選手を育てるために、
上記の考え方として、新しいシステムを構築していくことが必要である。
今回、この考え方に基づいて、ナショナルトレーニングシステム(NTS)
新設を企画した。日本協会は、このNTSを全国9ブロック・47都道府県ハン
ドボール協会と協力し、推進していく。
ナショナルチーム | 日本代表チーム |
UNDER-23 | 学生代表チーム |
UNDER-19 | ジュニア代表チーム |
UNDER-16 | ユース代表チーム |
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(1) 若年層プレーヤーからの発掘
(2) 若年層プレーヤーの指導・育成
(3) 若年層プレーヤーの活躍
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→ → → |
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↓ |
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6 ナショナルトレーニングシステム(NTS)の新設
(1)目的
・若年層の運動能力の高い意欲のあるプレーヤーを、早期に発掘し、将来、
世界で活躍できる可能性を持ったクリエイティブな日本代表プレーヤーに
育成する。
・統一された指導方法に基づいた一貫指導を実施する。
・世界を目指した指導内容を実施し、指導者のレベル向上をはかる。
・各地区地域のチーム・指導者に新しいハンドボール情報を伝達する。
・以上を実施することによる普及発展。
(2)場所・頻度
各9ブロックの指定体育館(各県持ち回りとする)にて、実施する。
NTSブロックトレーニングを1回/年実施する。
(3)対象者
・小学生・中学生・高校生×15名×男女=90名×9ブロック=810名
・NTSコーディネーターが、任意に推薦選出した選手。全国大会優秀選手
・推薦選手所属指導者・都道府県協会技術スタッフ
(4)選考
各都道府県に一任する。優秀選手をNTSブロックトレーニング候補選手
に指定する。さらに、その中からUNDERに挑戦するセンタートレーニン
グ候補選手を選考することにより、NTS→UNDERへ移管した体制を構
築する。
(5)指導スタッフ
NTSコーチ
NTSでは、9ブロックにコーディネーター・インストラクター・デモン
ストレーターチームを置き、全日本選手・全日本選手OB・日本リーグスタ
ッフ・学連スタッフ等があたる。さらに、ブロックには、技術委員長1名、
都道府県に技術委員長1名を設置する。
(6)費用
・参加選手の交通費は、片道分補助。宿泊を要する場合、3000円を補助。
・指導スタッフの交通費は自己負担。
・指導コーチはボランティアとして、講師料は支給しない。
(財)日本ハンドボール協会機関誌「ハンドボール」5月号より転載