<機関誌2008年11月号巻頭言>


「普及と競技力向上」



               (財)日本ハンドボール協会理事(学生連盟)  福地 賢介 


kantogen-0811
 大学スポーツは、現在まで、大学教育の一環という枠の中での普及と競技力の向上をテ
ーマとして、ハンドボールの大学関係者の先人が取り組み、それを今日まで継承してきて
おります。現在では、10年前と比較し男女合わせ30大学内外の増加を見て、現在約330大
学を数えております。

 ここ数年は、女子の伸びが顕著であり、高校生の有望選手の各大学への進学率上昇で、
それに伴い、地域格差の目だっていた競技力の均衡化も見られ始めております。

 地区学連によっては、普及や現状維持の為に、混成チームのオープン参加を認めたり、
色々と考えて、普及面でもそれなりの成果は見受けられます。

 大学への進学状況を見ても、従来は関東、東海、関西地区を除き、比較的地元への進学
志向が多かったものが、九州の選手が北海道、また、東北の選手が九州へといった事も見
受けらます。それに伴い、各地区学連のレベルアップにつながり、そのことが東西インカ
レ、インカレ等の結果にも現れてきており、一回戦から予断を許さない組み合わせ増えて、
競技力の向上も窺えます。

 アジアと異なり、ヨーロッパ及び他の国々の大半は、地域に密着したスポーツクラブの
中の大学生としてのスポーツであり、普及でも競技力向上でも、わが国とは異なった環境
の中で行われております。

 ロシアなどでは、普及としてのクラブの活動とトップアスリート育成の為の英才教育
(例えば8才から18才までのハンドボール専門学校、元ホンダのクリチェンコも在学)が
行われ、世界学生や他の国際大会に選抜されて出場しております。

 久しく五輪への道も閉ざされて、また、近年は世界選手権大会へも出場出来ず、強化の
為には、大学生世代の強化をと言われています。そして北京プロジェクトが採用され、当
時、大学2年生の宮崎大輔(日体大)、内田雄士(日本大)、その他の有望選手のスペイ
ンへのハンドボール留学がありました。その後の活躍は周知の通りで、それなりの成果が
認められております。しかし、休学・留学が、その後の大学生活に影響を与えており、難
しい問題もありました。

 日本協会としては、強化指定選手制度、NTS、ジュニアアカデミー構想等で、競技力の
向上が図られ、中学生−高校生−大学生の連携強化は、指定強化選手制度を採用しており
ますが、大学では、進学してきた指定強化選手の上積みや、新しい選手の発掘・育成にも
努める事と思っております。未だ、インカレ至上主義も窺え、トップランク大学の更なる
意識改革と協力をと思っております。

 世界学生選手権大会では、1996年のハンガリー大会でロシアに勝利した事が、選手の意
識改革につながり、その後は、今一歩でメダルというところまで来ており、それなりの向
上も見られます。学生界の競技力向上が日本リーグの刺激となり、大学生卒業後の受け入
れチームの増加に繋がるように、また、OB・OGの学生界回帰の努力もと思っております。

 各地区学連の努力でわずかながらも加盟大学が増加しており、今後も、弾力的な志向で、
加盟の体育会系大学のみでなく、同好会までも参加できるオープン大会の設置などで、更
なる普及にとも思っております。

 今後も(財)日本ハンドボール協会と普及・強化・その他の面で密なる関係を保ち、斯
界発展の為に努めていきたいと思っております。



  (財)日本ハンドボール協会機関誌「ハンドボール」2008年11月号より転載