<機関誌2008年6・7月号巻頭言>


「魅力を作り出すレフェリー」



         (財)日本ハンドボール協会審判委員会 委員長  島田 房二 


kantogen-0807

 「中東の笛」と騒がれた大騒ぎも一段落となりましたが、連日テレビに流され、満員の
観衆の中で放送された北京オリンピック予選再試合を見た多くの人たちから「ハンドボー
ルって面白いね」「スピード感があって凄い競技だね」と言うような言葉を数多く聞かさ
れました。この魅力を作り出すのがレフェリーの大切な任務であることを痛感しています。

 日本語では審判として統一されてしまいますが、アンパイア・ジャッジ・レフェリーの
ように、考え方の違いから英語では使い分けられています。これはスポーツの歴史から考
えなくてはなりませんが、一般的にはレフェリーと呼ばれる種類のスポーツは、事実判定
に関しての抗議は認められていません。何故ならばレフェリーは判定することが一番の目
的ではなく、調停者、仲裁人、決定を重ねられた人、であるという意味合いが強いからで
す。この考えを基にして「平成20年度の審判員の目標」に「防御側プレーヤーの権利の保
障」と「アドバンテージ・ルールの遵守」をあげています。私自身、ハンドボールの面白
さを問われたとき「反則されて体勢の悪い状態からでも何とかボールを繋いで、得点に繋
げようとしているプレー」と答えます。しかし、多くの試合でディフェンスが正常の防御
行為をしている状態で、攻撃側の判断ミスで無理に入り込もうとして動きが止まると、デ
ィフェンスの違反と判定されることが多いように思っています。再試合を直接観戦しまし
たが、IHFから派遣されたレフェリーは試合開始直後から基準をはっきり示し、最終場
面で退場を出さないように試合を運営し、上記二つの課題を無難にこなし、ハンドボール
の面白さを十分に引き出してくれたと感じました。

 4月初旬に行われた熊本での東アジアクラブ選手権に合わせ、隔年開催されている都道
府県審判長会議では、審判審査指導委員会が使用している指導内容の解説資料を配布しま
した。この中には今年度の審判員の目標も含まれています。各都道府県でも、審判審査指
導委員会を指導者として開催される講習会と同じ内容が使われるように準備してあります。
レフェリーだけでなくトレーナーサイドをも含めたルール講習会の開催を期待いたします。

【平成20年審判員の目標:審判員の課題】

1.防御側プレーヤーの権利の保障(競技規則8:1)
 @防御側プレーヤーが相手の進路を身体で阻む行為は許されている。
 Aどのような方向からでも、相手からボールを得るために、開いた片手を使うことは
  許されている。
 B正しい防御動作をしているプレーヤー陣の中に攻撃側プレーヤーが入り込むプレーに
  おいて、不用意に防御側の違反としない(プレーの評価)。

2.アドバンテージ・ルール(競技規則13:2、14:2)の遵守
 @アドバンテージはハンドボールの醍醐味である。競技レベルによる差異はあるが、
  「競技を早まって中断しないように」という条文の言葉を忘れない。
 A攻撃側チームの違反の直後に防御側チームがボールを所持した場合も同様である。
 B危険なプレーに対する罰則を忘れてはいけない。

3.レフェリーの動きと位置取り
 @試合展開が速くなり、防御隊形も大きく変化している。絶えず任務の分担を確認し
  あうこと。
 Aレフェリーはボールに対してだけでなく、その周辺や全体の事象にも注意を払う。
 B両レフェリーは、ジェスチャーなどでプレーヤーとコンタクトを取ることにより、
  プレーヤーを観察していることを知らせる。
 Cゴールレフェリーの観察位置は、ゴールポストに近すぎてはならない。ゴールレフ
  ェリーも最良の視野を得るための位置を求めて移動しなければならない。
 D両レフェリーは得点後に移動する際も、プレーヤーとボールから目を離してはならない。



  (財)日本ハンドボール協会機関誌「ハンドボール」2008年6・7月号より転載