<機関誌2003年5月号巻頭言>


普及と強化の原点であるジュニアの育成を



         (財)日本ハンドボール協会専務理事  大西 武三
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 長きにわたって日本のハンドボール界を支えてくださいました米倉会長の勇退
の後、渡邊新会長を戴き新年度が始まりました。私はスポーツ界の変革期に専務
理事に再任されましたが、その責任の重さに身が引き締まるとともに、この難局
を乗り越えなければならないと気持ちを新たにしている次第です。

 いよいよ今年9月にはアテネオリンピック予選が神戸で始まります。女子はモ
ントリオール、男子はソウル以来のオリンピック出場の悲願をかけた闘いが始ま
ります。

 代表チームはこれに賭けてここ数年激しいトレーニングや遠征を行っておりま
す。何としても代表権を得るべく最善を尽くしていきます。ハンドボール関係者
のみならず多くの方々の応援をよろしく御願い申し上げます。

 3年前よりプロジェクト21−構造改革−に取り組んでおりますが、これは、
「今」と「将来」を見据えての改革プロジェクトであります。このプロジェクト
の成功のためには、日本協会の諸事業を見直して軌道に乗せるだけでなく、それ
ぞれが関連し合しながら、一体のものとしてハンドボールの発展に繋げていかな
ければなりません。

 その改革のひとつに、地域での小学生からマスターまでのチームの立ち上げが
あります。まず、3000チームの小学生チームの設立を目標とするものです。この
実現のためには、ハンドボールの関係者が一体となってやっていかなければなり
ません。3000チームを作ることは並大抵にことではありませんが、それを実現す
ればハンドボールは、将来的に発展の基礎を築けると思います。子供はいろいろ
なスポーツを経験して、自分にあった種目を選択し将来につなげていきます。小
学校5〜6年の所謂ゴールデンエージ期には、そのスポーツが自分に向いている
かどうかわかります。出来るだけ多くの子供にハンドボールの楽しさを経験して
もらえば、続ける子供は多くなるし、将来のナショナルチームを背負うであろう
子供もでてくるであろう。日本のハンドボールは、主に学校に所属するチームに
よって支えられています。子供のハンドボールチームを育成するには様々な方法
が考えられますが、その一つとして学校関係の指導者に是非ともやっていだきた
いものがあります。それは学校という枠あるいは自分のチームだけという枠を外
し、一週間に一度でいいから、地域の子供にハンドボールコートを開放するなど、
面倒を見てもらいたいのです。チームの創設には、場所や指導者等が必要ですが
新たにその環境を作りだすことは大変に困難なことです。自分のチームを中心と
して地域の子供たちを仲間に携えたチームへと脱皮していただきたいのです。今
までも熱心な指導者によってそのような試みは各地でありますが、このような活
動の輪を大きくしていきたいものです。日本リーグのチームもそのことに賛同し
ていただいています。皆でハンドボールの稚魚を育て、放流していこうではあり
ませんか。必ず大きくなって自分のもとに帰ってくる魚もいるはずです。幸いな
ことに、ハンドボールというスポーツは子供の成長に素晴らしい特性をもってお
ります。自信をもって子供に勧められる競技です。皆で夢のあるハンドボール界
を作っていこうではありませんか。


    (財)日本ハンドボール協会機関誌「ハンドボール」5月号より転載