<機関誌2002年4月号巻頭言>


「今一度、目的・理念を明確に」




          (財)日本ハンドボール協会専務理事    大西 武三 
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 何か物事を進めていくには、その目的に応じた原動力が必要である。知力・体力・
経済力がいる。その力を生み出すもとは、何んといっても、人生をどのように過ごす
のか、ハンドボールは自分にとっては何なのかというような哲学というか理念が必要
である。この理念や哲学がしっかりしていないと物事に対する確固とした姿勢を保つ
ことができない。では、我々ハンドボールに携わる役員や指導者はどのような考え・
理念をハンドボール協会として持ち進んでいけばよいのであろうか。財団法人日本ハ
ンドボール協会寄付行為第3条目的には次のことが記されている。「この法人は、日
本におけるハンドボール競技を統括し、代表する団体として、ハンドボール競技の普
及及び振興を図り、もって国民体育の向上とスポーツ精神の涵養に寄与することを目
的とする。」これをもう少し具体的に期すとすれば次の5つにまとめられるであろう。

 ・ハンドボール競技をより魅力のあるスポーツに育てていくこと。
 ・ハンドボールを多くの人たちに知ってもらい、やってもらうこと。
 ・ハンドボールを通して青少年の育成に寄与していくこと。
 ・ハンドボールを指導普及していく指導者を育成すること。

 日本協会では、上記目的、理念を実行するために様々な事業を行っているが、これ
は都道府県協会と連盟が密接に連携し、役割を分担し、あたかも一つのチームのごと
くでなければ実現できるものではない。昨年度よりプロジェクト21(以後Pro.21)を
立ちあげている。ハンドボール協会が始まって65年の歴史を刻んでいる今、社会状況
が大きく変動し、普及も競技力も低迷し、事業も拡大の一途をたどっているが財政難
は慢性的である。この現状を捉えてPro.21は、今一度理念を明確にし、それを実現さ
せるための事業とシステムを見直すためのものである。岩井特任副会長のもとに草案
が出来ている。連盟、都道府県協会にその案の説明をし、意見を聞きながら出来た画
期的なものであるが、実行可能な案にするためには、さらに皆様方の意見を聞きなが
ら検討が必要である。

 Pro.21は、その発端がアテネオリンピック出場を果たすためには、普及を中心とし
た構造改革が必要ということで生まれたものである。本年は新学習要領が完全実施さ
れる年である。日本ではスポーツに接する第一ステップは小学校での体育授業である。
ハンドボールは小学生の発育段階期にとっては、すばらしい特性を持っているスポー
ツである。「やってもよい種目」としてハンドボールが小学生の指導要領で取り上げ
られたのは、「普及のオリンピック」にでたようなものである。何としてもハンドボ
ールを授業で取り上げていただき、全国民にハンドボールを知ってもらう努力をしな
ければならない。文部科学省も、地域のスポーツ活動を週休二日の過ごし方のプログ
ラムとして推奨している。都会のあるところでは、登録競技人口が10年前から急激に
減少し、約半分になっているところがある。これは極端な例であるが全国的に見ても
平成6年の9万人から2万人減少し7万人になっている。実に22%の減少である。少
子化等いろいろな要素はあるが、大変に危惧せざるをえない数字である。今後とも学
校体育を中心とする発展を強化する一方で、各市町村を中心とした地域のスポーツク
ラブの発展も平行してやっていかなければならない。小学校など授業でのハンドボー
ルの実践が学校スポーツのみならず、地域ハンドボールに好影響を及ぼし、学校スポ
ーツと地域スポーツが共存、融合する背景になって欲しいと願っている。

 アテネ特別強化委員会、がんばれ10万人会サポート会、NTS(ナショナルトレー
ニングシステム)、特別普及委員会など、将来に向けての夢や現在の荒波を乗り越え
るために設置された事業も、みなさん方のご理解・支援をえて、軌道に乗り始めてい
ます。また今年も国内・国際的に多くの事業が展開されていきます。皆でハンドボー
ルを盛り上げていくべくご支援のほどよろしくお願いします。


    (財)日本ハンドボール協会機関誌「ハンドボール」4月号より転載