<機関誌2000年5月号巻頭言>


将来に、限りない夢を託して



     (財)日本ハンドボール協会専務理事  市原 則之
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 全国各地のハンドボール関係者並びに愛好者の、絶大な支援と期待を一身に
受け、シドニーオリンピック予選に挑んだ男女ナショナルチームは、残念なが
らまたしても悲願を達成することが出来ませんでした。

 野田強化委員長を中心とする強化スタッフは、1997年の熊本世界選手権の強
化を皮切りに、現在の日本ハンドボール協会で出来得る限りの強化策を推進さ
せてきましたが、未だハンドボール界全体のパワー不足にて、オリンピックの
夢は4年後のアテネヘと持ち越すことになりました。

 ここに、日本協会運営責任者として謙虚に反省し、心からお詫び申し上げる
次第であります。

 さて、「世界各国の競技水準が著しく向上する中、日本のハンドボールは年
々低下の−途を辿っている」と先輩諸氏よりよくお叱りを受けます。

 しかし、私は日本の競技力は、決して下降しておらず、各階層指導者の努力
で年々確実に上昇していると思います。ただ、世界の強国に比べて強化環境の
整備に遅れをとり、それが成績に反映されていないのが原因だと判断致してお
ります。

 一般的に事業達成には、ソフトウェア(体制・システム)、ハードウェア
(施設・設備)、ヒューマンウェア(人材)の3部門の充実が不可欠であると
いわれておりますが、まさに強化事業も、この3要素が備わっていなければ優
秀な成績を残すことが困難な時代にきています。

 スポーツ先進国と言れれている、アメリカ、フランス、ドイツなどでは、こ
れら総ての面が整備されており、近年オリンピックなどの国際舞台での活躍が
著しい、隣の中国・韓国においても、国家的支援によって、この3部門の充実
が図られ、その効果がメダル獲得数として、顕著に表れていることは周知の通
りであります。

 最早日本は、アジアのスポーツ先進国ではないことを素直に認めなくてはな
りません。

 そこで、本年度を任期終了とする日本協会執行部は、「ハンドボール界 100
年の計」の礎となるべく下記2つの基本方針を掲げ、将来に夢を託すよう施策
致しましたので、関係各位のこ理解とこ協力を心からお願い申し上げます。

               記

1.ナショナルトレーニングシステム(NTS)の構築
  将来、恒常的にオリンピック出場を果たすため、普及と強化を一体とす
 る「見つけ」「育て」「活かす」の一貫指導基盤を整備した、「勝利の方
 程式」を確立させる。

2.頑張れ10万人会の推進と定着
  普及から強化までの事業規模拡大の財源を補う、強固な財政基盤を確立
 するため、全国的にサポート会員を勧誘し登録会員を増加させ、ハンドボ
 ール界のパワーアツプを図る。



    (財)日本ハンドボール協会機関誌「ハンドボール」5月号より転載