平成17727

2005年 競技規則変更:全項目の解説

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()日本ハンドボール協会 競技本部 審判部・競技運営部

 

レフェリーは3欄すべてに必ず目を通すこと。マッチバイザーとタイムキーパー・スコアラーは、レフェリーの欄にも目を通すこと。

 

 

 1.  攻撃側プレーヤーが相手のゴールエリアに侵入した(またはゴールエリアの床についているボールに触れた)ためにレフェリーが笛を吹いた場合、相手の(フリースローではなく)ゴールキーパースローによって競技を再開する。

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

 ゴールキーパーは以前と逆の対処をしなければならない。ボールがゴールエリア内にあれば、直ちにスローをすることができる。ボールがゴールエリア外にあれば、ゴールエリアにいるゴールキーパーに戻さなければならない。

 ゴールキーパースローに際して、相手はゴールエリアラインのすぐ外側に立ってもよいが、ラインの中に入ってボールをカットしようとしてはならない。

両チームのプレーヤーにボールの所持が入れ代わったことが分かるよう、「ゴールキーパースローのジェスチャー」を用いて明瞭に指示しなければならない。

素早く行おうとしているスローを相手プレーヤーが妨害しないよう、その行動を注意深く監視する。

 レフェリーの笛の後は、ゴールキーパーのチームがボールを所持することになり、ゴールキーパースローが完了するまで競技の中断中である。

 

 

 2.  ボールが天井(またはコート上方の付属設備)に当たった場合、最後にボールに触れなかったチームの(フリースローではなく)スローインによって競技を再開する。ボールが天井に当たった位置から近い方のサイドライン上の最も近い地点よりスローを行う。

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

 近い方のサイドラインへ向かい、ボールの当たった位置と平行な位置と思われる場所から、通常どおりスローインを行う。レフェリーの笛の合図を待たない。

 スローインのジェスチャーを示し、直ちに正しい方のサイドラインとおよその場所を指す。正確な位置の決定はまず不可能なので、大きく隔たっていたり、不当に有利になったりしない限りは、柔軟に対応すべきであることを十分に理解する。

 まさにその瞬間にチームタイムアウトを請求された場合には、どちらのチームがスローインを得たのかについて注意を払う。

 3.  7 mスローを判定したとき、タイムアウトを必ずしも取る必要はない。タイムアウトを取るかどうかは、その通常の判断基準に従ったレフェリーの裁量に委ねられる。

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

 自チームが「急いている」場合、タイムアウトをあてにするのではなく、可及的速やかにスローの準備をする。反対に、タイムアウトを取って欲しくない場合、遅延行為をしようと企んではならない。従来どおり、スローの準備ができた後、ゴールキーパーの交代は認められない。

 タイムアウトを取ると決定する前に、得点状況と残りの競技時間を、そして遅延の原因はどちらのチームにあるのかについても、考慮する。スローを行うプレーヤーを指名するのが遅い場合やゴールキーパーが交代する場合、通常はタイムアウトを取るべきである。迷った場合はタイムアウトを取る(このようにしても競技規則に矛盾しない)。コートレフェリーは「T字」のジェスチャーでオフィシャル席に合図をしなければならない。

 7 mスローの判定があったとき、常に時計が止まると思い込まないよう留意する。レフェリーの出すタイムアウトの合図に注意しながら待機する。

 

 

 4.  失格の対象となるのは粗暴で激烈な違反だけではないことを、競技規則に注釈として加筆した。タイミングが悪ければ、軽微なプッシングも極めて危険な行為になりえるということである。すなわち、プレーヤーがジャンプしているときや勢いよく走っているときなど、何をされるか予見できない、あるいは無防備な状態にあるときである。

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

相手がこのように自己防衛できない状態にあるときは、怪我につながるような(無意識に押したりぶつかったりする)違反を慎む。たとえそのような行為を捨てばちになってしなければならないと思っても、無防備な相手に対して押したりぶつかったりして、はずみを加えるとどのような結果になるかをよく考えて欲しい。

 「重大な」違反や激突だけに注目する風潮から離脱しなければならない。ゴールエリア上をジャンプしているとき、あるいは速攻の最中によくあるケースであるが、軽微な身体接触または「死角」からの身体接触によって、自己防衛できない状態にあるプレーヤーが危険なめに遭う状況をよく目の当たりにする。押したりぶつかったりすると特に危険であろう。このような場合には、決してレッドカードをためらってはならない。

 

 

 

 5.  競技の最後の1分間で、まさにチームの求むべき得点状況になったとき(1点リード、同点、求むべき得失点差)、いかにスポーツマンシップに反しようとも、判定結果を意に介さずにあらゆる手段を講じようとし、その得点状況を固守しようとするであろう。その中には、何らかの形で妨害行為をし、相手にシュートできる状態まで持ち込ませないように違反する場合がある。このような違反により失格となった場合、主催連盟は重い罰則・出場停止を試合後に科さなければならない事例に相当するので、レフェリーはこの失格について報告をする。

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

 出場停止の危険性を考えれば、もっと「激しさ」を抑えた方法によって、相手がシュートを打つチャンスやフリーの味方にパスを出すチャンスの芽を摘むようにしなければならない。

レフェリーは得点状況と残りの競技時間に気を配らなければならない。なお、妨害された明らかな得点チャンスの補償として7 mスローを判定した場合、このときに判定した失格は上記の範疇には含めないで、「通常」の失格として扱わなければならない。

 このような状況においては、1秒すら重大な意味を持つタイムアウトが幾度も突然に取られるので、非常に機敏な対応を頻繁に要求される。合図に際して正確に時計を止めることができなかった場合、時計を正確に合わせる方法について、レフェリーに助言する必要性も生じるであろう。

 

 

 6.  何年も前に競技規則を変更し、コート外における違反に対しても、1試合を通して段階罰を通常のシステムどおりに適用できるようにした。例として、ベンチにいるプレーヤーやチーム役員に対して2分間退場とすることが可能になった。そのときには、ハーフタイム休憩中や他の休憩時間中も完全に同じ尺度にして一貫させるということまで考えが及ばなかった。今までは、イエローカードから一気にレッドカードへ進まなければならなかったが、今回は休憩時間中にも退場を適用できるようにした。

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

 すでに罰則を適用されているプレーヤーやコーチが休憩時間中に違反した場合、選択肢は失格しかないため、その対応をしなければならないレフェリーにとってこれは疎ましいものであった。今後は、抗議したり、後半の開始に際してなかなか戻って来なかったり、その他のスポーツマンシップに反する行為があった場合は、2分間退場となる。

 罰則を適用する機会を増やすことではなく、適用法に一貫性を持たせることが目的である。しかし、前もって罰則を適用されていなくても、ある状況においては2分間退場が適切な罰則となる場合もあるであろう。休憩時間中の失格に対して、今後はコート上のプレーヤーを2分間減らして競技しなければならないことに注意する。休憩時間中に罰則を適用したことを、オフィシャル席に確実に伝える。

 前後半の間や他の休憩時間中に適用された2分間退場は、他の退場の場合と全く同様に扱う。したがって、コート上のプレーヤーの数を正しくして競技を再開できるよう、チームと十分にコミュニケーションを取り、レフェリーを手助けすることが大切である。

 

 

 7.  ボールを止める、または逸らすためにプレーヤーが足の膝より下の部分を使用する状況について、より明確な解説を記載した。プレーヤーがシュートやパスを積極的に妨害した場合は(すぐに1回目から)段階罰を適用しなければならない。プレーヤーの股下を狙って相手がボールを投げたときに反射的に足を閉じた場合や、相手に対して移動中にプレーヤーの動いている(体の一部としての)足がボールの邪魔をした場合は、段階罰を適用しない(相手のフリースローのみ)。

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

 ボールが来たときに、プレーヤーは本能的に足を出す癖を止めなければならない。

 従来どおり、足の膝より下の部分を動かしていないプレーヤーの足の膝より下の部分にボールを投げつけられた場合は、違反にならない。

 

 

 

 8.  タイムキーパー(またはデレゲート)が笛またはブザーによって競技を中断するときは、レフェリーのタイムアウトの合図を待たないで、公示時計を必ずそれと同時に止めなければならない。中断の理由による相違はない。タイムキーパーの笛の後、レフェリーの判定はすべて無効となるが、段階罰はいずれも有効である。例えば、得点は認められない(その後にスローオフを行っていたとしても)。

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

 オフィシャル席からの競技中断の笛がレフェリーにも両チームのプレーヤーにも聞こえなかった場合には、その後もプレーが続いてしまうこともありえるだろう。防御側プレーヤーは競技が中断したと思い、一方で攻撃側はプレーを続けている状況も起こりえるだろう。大切なことは、捨てばちな行為に対して適用された罰則は有効となるので、このような行為をしないことなのである。

 競技を速やかに中断できるよう、レフェリーはオフィシャル席からの笛の合図を聞き取れるようあらゆる努力をしなければならない。中断の理由を明確にし、罰則や他の処置の必要性について確証を得なければならない。オフィシャル席と協力して、レフェリーはどの位置からどのようなスローで競技を再開するかを決定する。

オフィシャルは、常に笛の合図と連動して時計を止める習慣を身につけなければならない。

笛の合図が聞こえなかったためにコート上でプレーを続けている場合には、タイムキーパー/デレゲートは直ちに競技の中断を知らせるよう、厳しく督促されることになる。もっと強い思い切った手段が必要である(サイレンや大きな音の笛、ジェスチャー、立ち上がる、さらにはコート内に立ち入る)。デレゲート/オフィシャル席は、笛を吹いて競技を中断したとき競技はどのような状況だったかについて、レフェリーが正確に判断できるよう手助けしなければならない。

 

 

 9.  前後半の競技時間の終了後に最後の1投としてフリースローを与えたとき、その実施における特別規定を記載した。この規定の意図は、フリースローの実施におけるスピードアップと、苛立ちの種になり時間を浪費する「茶番劇」を排除することにある。スローを行うプレーヤーの味方のプレーヤーは、スローを行うプレーヤーから少なくとも 3 m 離れなければならないので、スローを行うプレーヤーの周りに群がることはできない。スローを行うチームに対しては1名のプレーヤーの交代を許可するが、防御側プレーヤーの交代は一切許されない。レフェリーはスローを行うプレーヤーに速やかに正しい位置につくように、そして直ちにスロー開始の笛が鳴ることを明確に伝えなければならない。

 

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

 スローを行うプレーヤーは指示された位置に素早く移動し、味方のプレーヤーはその位置から離れなければならない。スローを行うプレーヤーは、レフェリーの笛がすぐに鳴る心積もりをしておくべきである。新たにスローを行うプレーヤーを起用するために交代する場合を除いて、遅延はスポーツマンシップに反する行為と見なされる。防御側プレーヤーは3 m以上離れなければならないし、妨害すればスポーツマンシップに反する行為と見なされる。防御側プレーヤーは交代することができないので、防御の準備を待つ必要はない。

遅延の生じる原因は全くなくなった。攻撃側はスローを行うプレーヤーをすぐに決定し、交代が必要ならば直ちに交代しなければならない。スローを行うプレーヤーが正しい位置についたら、すぐに笛を吹かなければならない。スローを行うプレーヤーの味方のプレーヤーの位置に関する規定も忘れないようにすることが重要である。防御側プレーヤーが妨害した場合には罰則を適用する。ゴールキーパーが負傷を訴えた場合は、直ちにそのゴールキーパーはコートから出て交代しなければならない。これ以外の交代はすべて禁止されている。交代しようとしてコートに入った場合、最初の違反に対してコート上のプレーヤーを減らす罰則を適用する。これに引き続いてコートに入った違反に対しては、単に交代を認めないだけである。

デレゲートとオフィシャル席はすでに計時の任務を終えており、レフェリーが交代に関する規定を守らせようとしているのを手助けしなければならない。

オフィシャル席は両チームに注意を促して両ベンチを監視し、オフィシャル席で防ぐことのできなかった違反については、すべて直ちにレフェリーに知らせなければならない。

よい方法は、フリースローが判定されたときにコート上にいるプレーヤーの番号を素早くメモすることである。そうすれば、議論の余地は一切なくなる。

 

 

10.  各チームにおいて、ゴールキーパーとして出場するすべてのプレーヤーは同色のシャツを着用しなければならないと記載した。通常はコートプレーヤーとしてプレーしている者がゴールキーパーとして出場しなければならないという不測の事態や、おそらく競技の終了間際の「7人攻撃」の状況もこれに該当する。

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

 これは明らかに競技前から準備しておかなければならないことである。競技の終了間際に、コートプレーヤーに味方のゴールキーパーと同色のシャツを着用させるために用意した「ベスト」や特製シャツについても、この規定を順守しなければならないということである。少しでも判断に迷った場合は、競技前にオフィシャル席でチェックを受ける。

 問題が生じた場合にはオフィシャル席が第一発見者となるのは確かであるが、レフェリーもこの問題を念頭に置いておかなければならない。あるプレーヤーが誤った色のシャツを着てゴールキーパーとしてコート内に入った場合、競技を中断してそのプレーヤーをコートから出さなければならない。相手チームのフリースローによって競技を再開するが、罰則は適用しない。ただし、あるプレーヤーがコートプレーヤーと同じユニホームを着てゴールキーパーとしてコート内に入った場合は、別の状況である。これは不正交代であり、規則どおり罰則を適用する。

 両チームとレフェリーが問題を防ごうとしているのを、デレゲートとオフィシャル席は手助けするべきである。プレーヤーがゴールキーパーと交代してコートの中に入る準備をしているとき、そのプレーヤーが誤った色のシャツを着ている場合には、もし可能であれば、このような交代を未然に防ぐべきである。問題が発覚する前にプレーヤーがコート内に入ってしまった場合は、オフィシャル席は直ちに競技を中断し、これをレフェリーに知らさなければならない。

 

11.  外から見えるピアスについては条文中に特記し、イヤリングや突起のない指輪と同類のものとして位置付けた。他のプレーヤーに危険を及ぼさないようにテープ等で被えば、ピアスをしてもよいという意味である。外から見えない(ユニホームの下や口の中の)ピアスについては規制していない。

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

 チーム役員は自チームのプレーヤーに注意を促してチェックする責務を負う。

競技中に発生する問題が最小限に留まるよう、競技前やウォーミングアップ中によく観察しておく。

競技中に問題が発覚した場合、これを正すためにそのプレーヤーをコートから出さなければならない。通常、競技が中断したとき、あるいは可能ならば競技中にコートから出させるべきである。

 競技中、オフィシャル席は監視してレフェリーを手助けする。

 

 

12.  正式なチームキャプテン(つまり、腕章によって識別され、競技に先立って行われるコイントスへの参加を要請されるプレーヤー)の存在は今後も認めるが、もはや必須ではなくなった。チームにキャプテンがいてもいなくても、プレーヤー・チーム役員の任意の者がチーム代表者としてコイントスに参加できる。

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

 従来どおり、レフェリーやオフィシャル席とコンタクトを取ることが許されているのは「チーム責任者」である。チームに公式または非公式のキャプテンを置くことを禁止しているのではなく、置かなくてもよいのである。チームは精神面での効果を期待してキャプテンを置いてもよいが、レフェリーやオフィシャル席に関与する任務はない。

 コイントスの方法は変えていない。各チームからコイントスに参加する人を出すようチーム責任者に依頼し、そして選出された人を承認する。

 

 

 

13.  記録用紙に記載されていないプレーヤーや参加資格のないプレーヤーが競技に参加した場合、チーム責任者に段階罰を適用することになる。このプレーヤーに段階罰を適用する場合は、別の方法で違反をしたとき、つまり不正交代のとき、8人目のプレーヤーとしてコートに入ったとき、コートに入ってから違反をしたときに限られる。

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

プレーヤーが競技の開始後に遅れて到着する場合には、チーム責任者は特に注意深く記録用紙を再確認しておくべきである。

コート上にいるプレーヤーが記録用紙に記載されていないためにオフィシャル席が競技を中断した場合、まず「チーム責任者」に段階罰を適用する。罰則の種類は、同チームの役員がこれまでに適用された罰則によって決定される。原則として相手のフリースローによって競技を再開する。ただし、競技の中断によって相手の明らかな得点チャンスが妨害された場合には7 mスローを判定する。

 記録用紙に記載されていない番号のプレーヤーが遅れて到着した、ベンチに座っている、またはコートに入る準備をしている場合、何らかの対処をすべきであるという意味において、オフィシャル席は予防的役割を担っているはずである。記録用紙に記載されていないプレーヤーがコートに入っていると分かった場合、競技を直ちに中断しなければならない。

 

 

14.  競技の開始後は、競技への参加資格のあるプレーヤー・チーム役員以外の者が交代地域に入らないよう、チーム責任者が管理しなければならない。いかなる違反に対しても、チーム責任者に段階罰を適用することになる。

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

 「チーム責任者」(またはその代わりを務めるチーム役員)は競技の初めから終わりまで、これを監視しなければならない。

 前項の内容と同じ

 あらゆる問題を未然に防止できるよう、競技の開始前にデレゲートとオフィシャル席は両交代地域をチェックしなければならない。

 

 

15.  負傷したプレーヤーを救護するために許可されてコートに入場したはずのチーム役員(またはプレーヤー)が、コート上で自チームのプレーヤーへの指示に専心したり、相手チームのプレーヤーやレフェリーに言い寄ったりした場合は、スポーツマンシップに反する行為として罰則を適用できると明記した。

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

 入場した者は、負傷した自チームのプレーヤーの救護に専念するよう特に注意しなければならない。負傷したプレーヤーと関わった相手プレーヤーやレフェリーを非難する機会を得ようとしているかもしれないが、この行為は厳しく禁止されている。

 心情を理解できる場面では、レフェリーは特にその予防に努めるべきである。禁止行為の兆候が少しでも現れたら、言葉とジェスチャーで確実に思いとどまらせなければならない。このメッセージを聞き入れないで不適切な行為をした場合は、この時点で罰則の適用となる。

 オフィシャル席の任務は余計な者がコートに入らないよう努めることと、これでもなお違反が起こった場合にはレフェリーに知らせることである。デレゲートがレフェリーを補佐する必要があると判断した場合を除いて、コート上における不適切な行為に対して直接的に関与する任務はない。しかし、その場合でも予防に努めなければならない。

 

 

16.  悪意のない目的のために、かつ有利にもならない状況で、プレーヤーが交代ラインの範囲外のサイドラインを通ってコートから出ても、スポーツマンシップに反する行為や不正交代と見なしてはならないと明記した。プレーヤーが水分補給やタオル使用のためにベンチに戻る(ゴールの後方に出る)場合や、退場となったときに潔くベンチに向かったが交代ラインの範囲外のサイドラインを通って戻った場合などが、例として挙がる。

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

 不正交代と誤解される危険性があるので、今なお、コートから極力出ないようにして水分を補給したりタオルを使ったりすべきであろう。

この種の無害な行為に対して神経をとがらせるべきではない。例えば、退場となったプレーヤーが潔くコートから出ていくとき、そのプレーヤーが交代ラインの終わりを示す15 cmラインの外側を通ってベンチに戻っても、気にかける必要は全くない。

 オフィシャル席は不正交代や不正入場という本来のケースに注意を払わなければならない。同様に、無害な行為をスポーツマンシップに反する行為と解釈してはならない。

 

 

17.  プレーヤーとチーム役員の行動を監視するというレフェリーの任務は、競技会場に到着したときから始まる。もし競技中であれば罰則を適用するであろうと思われる行動を、競技の開始前に起こした場合にも、罰則を適用しなければならない。罰則は警告か失格のいずれかである。しかし、このような場合、その違反をした者が競技に参加するかどうか、レフェリーにはよく分からないときがある。極端な場合には、競技を開始してから初めて気付くことがある。このような場合には、発覚した時点で罰則を適用することになる。競技の開始前に失格を適用していれば2分間退場を伴わないケースなので、遡及して失格を適用した場合も2分間退場を伴わない。競技の開始前に違反をしたプレーヤーやチーム役員(または別のチーム役員)が競技の開始後に別件で既に警告となっている場合、競技の開始前の出来事に対して適用するはずであった警告を遡って適用してはならない。

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

 罰則を適用されないだろうという誤った思い込みが特に理由となっているのかもしれないが、競技の開始前に問題を起こさないよう、プレーヤーとチーム役員に対して助言する。

 レフェリーが競技の開始前にある人物から不当行為を受けた場合、その人物が競技に参加するプレーヤーやチーム役員なのかどうかを競技の開始前に確認できるよう、全力を尽くすべきである。そうすれば競技の開始前に罰則の適用を済ませてしまうことができる。失格となったときでも、チームは他のメンバーと入替えできるケースも出てくる。

 

 

 

18.  スローを行うプレーヤーやその味方のプレーヤーの違反が、各種スローを行う前にあった場合、再開の笛なしにスローを行っている間にあった場合、再開の笛の後にスローを行っている間にあった場合の3つに分けて、最新の考え方を第15条に記載した。最後の場合、スローを行うチームは通常ボールの所持を失うことになる。他の場合は、原則として違反を正してから再度スローを行わせる。

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

 競技の再開の笛に注意を払い、このような場合には危険を冒さないようにする。スローオフの場合を除いて、笛が鳴ってからボールを離すまでの動作に気をつけなければならない。

笛を吹いたか吹いていなかったかを、必ずしっかりと判断してから判定する。笛を吹いていない状況で、違反してスローを行った直後にボールの所持を失った場合、そのまま競技を続行する。

 

 

 

19.  ラインを踏み越えたり滑り越えたりしないようにという配慮に関連して、7 mスローを行うプレーヤーは7 mラインの後方1 mまでの範囲で位置を取る権利があると明記した。この規定は他のプレーヤーの位置取りに影響を及ぼさない。

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

 横方向の余地はない。つまりスローを行うプレーヤーは長さ1 mのラインの真後ろの範囲(1辺の長さが1 mの正方形の中)に基準足を置かなければならない。

 従来どおり、ジャンプスローには注意を払う。

 

 

 

20.  スローオフやスローイン、フリースロー、7 mスローを行ったプレーヤーは、ボールがたとえ他のプレーヤーに触れていなくても、相手のゴールポストやクロスバーに当たれば、再びボールに触れることができると条文で謳ってきた。ゴールキーパースローについてはこれに対応するコメントの記載が抜けていた。今回、何名かのゴールキーパーから質問があったため、ゴールキーパースローを行った後、稀なケースではあるけれども相手のゴールに当たって跳ね返ってきたボールをゴールキーパーが触ってもよいと明記した。

 

 

21.  基本となる競技規則書では12名以下としていたにもかかわらず、何年もの間IHF 主催の競技会では14名以下としてきた。多数の各国協会においても、治外法権を上手く活用して、幾つかの競技会またはすべての競技会でこのようにしてきた。試行の結果が良好だったので、今回は基本となる競技規則書の記載を変更することにした。

 

 

以上が200581日から新たに施行される競技規則の変更点である。しかし、2002年から2004年の間に通達してきた幾つかの変更点については、旧版の競技規則書には掲載されていない。コーチ/プレーヤー、レフェリー、デレゲート/オフィシャルはこれについても精通しているべきであり、いくつかについては以下に再び解説して注意を促した。2005年版競技規則書において競技規則の変更はないものの修正した条文が数ヶ所あり、これまでに質問のあった点について以下に解説した。

22.  2001年以降、ゴールキーパースローの定義を変更し、ゴールエリア内でゴールキーパーが単にボールをキャッチするか拾い上げる状況も含めるようにした。そして、ゴールキーパーがボールをコントロールしている間は競技の中断中であると強調してきた。ボールはゴールキーパーのチームのものであり、他のプレーヤーは誰もボールに触れることができない。この最後の文章は、ボールがゴールエリア内に止まっている場合や転がっている場合にも適用される。しかし、ボールがゴールエリア内で転がっている場合は競技中であり、止まった時点で競技の中断中となる。このことは、実際のところ重要ではない。しかし、まさにこのような瞬間にゴールキーパーのチームが違反すれば違いが生じてくる。それが競技の中断中であれば、ゴールキーパースローを行って競技を再開しなければならないし、競技中であればボールの所持を失うことになり、およその場合に相手がフリースローを行うことになる。

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

 

ゴールキーパーのチームにおける不正交代を合図する笛がオフィシャル席から鳴ったとき、競技の再開方法の異なる「競技中」と「競技の中断中」のいずれの瞬間に笛が鳴ったのかを正確に判断しなければならない。ゴールキーパーの味方のプレーヤーがスポーツマンシップに反する行為をしてレフェリーが笛を吹いた場合も同様である。

 特にオフィシャル席が主導して競技を中断した場合は、笛の瞬間にボールがあった正確な位置(床の上、またはゴールキーパーの手中)を確認し、レフェリーを手助けできなければならない。

 

 

23.  新しい解釈ではないが、2分間退場となった直後(またはその最中)やコート上のプレーヤーを2分間減らすような罰則を受けたときに、そのプレーヤーが暴力行為によって追放となった場合の処置を正確に明記した。このような場合、退場やコート上のプレーヤーを減らす罰則を追放の処分の中に含めてしまい、チームは競技の残り時間すべてを1名少ない状態でプレーすることになるだけである。

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

 

 前の罰則の影響は帳消しになることを明確に示さなければならない。

 前の罰則は記録用紙に記入するが、公示時計やカードに表示される入場(退場満了)時間を変更しなければならず、その後は「残りの競技時間は1名減らした状態」と表示する。

 

 

24.  床に膝をついて、座って、あるいは横たわってボールを扱うことは許されてきた。しかし、各種スローの実施に際して「スローを行うプレーヤーは片足の一部を終始、床につけていなければならない」という条件があるために、「床に膝をついて、座って、あるいは横たわって各種スローを実施してもよい」かどうかが不明確になっている。条件さえ満たしていれば、このようなスローを禁止する条項はない、というのが答えである。典型的には、プレーヤーが恐らくは違反によって倒され、起き上がる前に少しでも早くフリースローを行えばチャンスがあると判断したときに関係するであろう。

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

 このような機会を活用できるのは、プレーヤーがすでに床に倒れているときだけである。プレーヤーが横になってこのような態勢で7 mスローを行うことを思いついたとしても、スポーツマンシップに反する行為として罰則を適用されることになるであろう。

このような状況は瞬時に起こるため、レフェリーはプレーヤーが基本的に正しい位置にいて、スローの間は足も床につけていたことを確認するのがやっとであろう。

 

 

 

25.  決して、笛を吹いて妨害する観衆の思惑どおりにさせてはならない。同様に、決定的な瞬間に(停電などの)不可抗力でチームが不利益を被らないようにしなければならない。したがって、様々な外的影響により競技を中断せざるを得ない状況において、そのときに存在していた明らかな得点チャンスが消滅してしまった場合、競技規則141cを拡大解釈してレフェリーが7 mスローを判定できるようにした。しかし、反対の状況に対しても同様に適用する。すなわち、防御側プレーヤーが無関係な笛に騙されて、そうでなければ生まれるはずのない明らかな得点チャンスが生まれて、競技を中断しなければならない場合である。攻撃側チームと防御側チームを対等に扱わなければならない。

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

 

 レフェリーは、すべてのプレーヤーの位置を考慮に入れて、明らかな得点チャンスが存在したと確信しなければならない。無関係な笛があったためにプレーヤーが攻撃動作を止めてしまった場合、疑わしい点をプレーヤーに有利に解釈してやらなければならない。

 プレーヤーに動作を止めさせるような笛の音がレフェリーにはっきりと聞こえなかった可能性のある場合、オフィシャル席は自分たちの観察事実に基づいてレフェリーを手助けしなければならない。

 

 

26.  チーム役員やプレーヤーは競技の終了までに、承諾を得ずに交代地域から去ることができる。しかし、観衆の中や他の場所にいても、レフェリーの管理下から逃れたわけではない。いかなる不法行為も罰則の対象となる。さらに、チーム役員が交代地域を無断で去った場合、チームを管理し指導する権利を失う。

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

 絶対に必要でない限りは、チーム役員もプレーヤーも交代地域を離れるべきではない。もはや参加できなくなったプレーヤーがどこか他のところに腰を下ろしたいと思った場合、コートから出ていくときやその移動先において不当行為のいかなる兆候・誇示も許されない。

 チーム役員の誰かが不当な場所からチームに戦術を与えようとしたり、いかなる場所においてもプレーヤーやチーム役員が不当な態度を示したりした場合には、レフェリーは適切に対処しなければならない。このような場合に、レフェリーはその人物に罰則を適用するために交代地域に戻るよう促さなければならない。

 誰かが他の場所に移動した場合には、デレゲートとオフィシャル席は注目をし、不適切な行為の兆候が少しでもあればレフェリーに伝えて主に手助けをする。「チーム責任者」とコンタクトを取っても解決しない場合は、必ずレフェリーに知らせなければならない。

 

 

27.  プレーヤーはコート周囲の領域を戦術的に使用してはならない。サイドライン付近にいる防御側プレーヤーをかわすためにプレーヤーがサイドラインの外側を走り、ドリブルをするスペースとして利用することはできない。このような場合はフリースローを判定する。加速するための助走スペースを確保しようとして、サイドラインの外側でボールを待つこともできない。このような場合には、プレーヤーにコート内に戻るよう伝える。これを拒否したり再びこのような状態になったりしたときには、フリースローを判定する。

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

 他に悪影響を与えずにコートから出る場合(16. 参照)や勢い余って止まれなかった場合と、有利になるために故意にコート外に出る場合とでは、両者に大きな相違がある。問題が生じないようにするため、サイドラインに沿って取った位置をよく確認する。レフェリーの指示に従うよう念を押しておく。

プレーヤーが止まれずにサイドラインを越えてしまった場合と、サイドラインの外側でボールをコントロールしながら走ったりボールを待ったりする計算尽くの場合を、明確に区別しなければならない。後者の場合には、はっきりとジェスチャーを示して(または声を出して)プレーヤーに知らせ、理解させる。大切なことは未然に防ぐことである。

 

 

 

28.  パッシブプレーの予告合図の方法に関して、ここ数年の間に細かく修正してきた。(ボールを所持しているチームがフリースローを得ようとも) 攻撃が終了するか合図が無効になるまで予告合図をし続ける。防御側チームのプレーヤーやチーム役員に段階罰を適用した場合、あるいは打ったシュートがゴールかゴールキーパーに当たって跳ね返り、攻撃側がボールを再び所持した(リバウンドボールを手にした、あるいはスローインを得た)場合に、その合図は無効になる。このような場合、ボールを所持したチームは新たに組立て局面から攻撃展開する機会を得る。

   各種スローの実施に際して遅延がある場合、パッシブプレーの一形態として見なすということも強調しておく。これは、スローオフやゴールキーパースロー、フリースローを行うときに典型的な遅延行為が生じる。このような兆候が初めて見られた場合にレフェリーは注意を与えなければならないが、以降すべてのケースについては直ちにパッシブプレーの予告合図を出さなければならない。注意や予告合図ではなく、タイムアウトがより急務で適切というような状況(競技時間や得点)の場合は例外である。

 

コーチとプレーヤー

レフェリー

デレゲートとオフィシャル席

予告合図について熟知しておくと、攻撃側としても防御側としてもこれを有効に活用できる。

スローオフやフリースローは安心して時間を浪費できるチャンスであると誤解しない。でないと、即座に出されるパッシブプレーの予告合図によって、大きなプレッシャーを感じることになる。

予告合図が無効となる状況に的確に反応して腕を下ろし、これによってチームは新たな組立て局面から攻撃展開する機会を得る。

予告合図を出した後に次の段階の準備が整ったとき、適切な瞬間を確実に選ぶ。チームが最終的にシュートを打とうとしているその瞬間に、フリースローの判定をしない。

典型的な例としては接戦のゲームの終盤においてであるが、1秒単位で問題となるようなスローの遅延に対しては、ジェスチャーや予告合図ではなくてタイムアウトを活用する。

 パッシブプレーの予告合図が出たときに、チームタイムアウトを請求するという常套手段に対して準備をしておく。グリーンカードが提出される直前に突然ゴールにシュートを放つことの多い瞬間であることも銘記しておく。笛を吹く前に、どちらがボールを所持しているかについて正しく認識しておく。

 

 

29.  7 mスローコンテストを実施するとき、両チームは3名ずつのシューターを選出し、交互にシュートを各々1投ずつ行う(先投・後投はコイントスにより決定)。ゴールキーパーはその都度交代してもよいし、シューターとゴールキーパーを兼ねてもよい。これで勝敗が決まらなかった場合、両チームは再度3名ずつのシューター(前回のメンバーと何名重複してもよい)を選出し、交互にシュートを1投ずつ行って(先投・後投は前回の反対)サドンデス方式で勝敗を競う。勝敗が決するまで、この(3名ずつを1度に選出する)方式を続ける。なお、競技時間の終了時点で退場中、および既に失格・追放となったプレーヤーは7 mスローコンテストに参加できない(従来どおり)。

 

   IHFでは5名ずつとなっているが、日本ハンドボール協会では3名ずつで実施する。