<平成14年度ハンドボール競技規則について>

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競技規則(2001)―― 改正の概要と解説


(財)日本ハンドボール協会 審判部 

  

 2001年8月1日からIHFで公式に実施された新競技規則において,およそ20項目の実質的
な規則改正がなされた.これに伴い,(財)日本ハンドボール協会では平成14年4月より
新競技規則を実施する予定となっている.2000年11月のIHF伝達総会で呈示された文書に,
すでにこの改正点は要約されていた.しかし,これ以外にも競技規則条文における構成,
配列,表現などを含めた記述上の改正も幾多に及んでいる.

 IHF競技規則書2001は英語で原書が作成された最初のものであり,したがって英語版の
競技規則書はより活用しやすくなっている.その成果として,条文はより読みやすく理解
しやすくなり,特定の項目を見つけやすくなっている(条文に下線を引き,各規定のキー
ワードにすぐ気付けるようになっている).また,競技規則を自国語に翻訳するにあたっ
て英語版を使用している多くの各国協会で,このことが役に立てばとの願いも込められて
いる.

 しかし,競技規則書の読者は,規則の実質的な改正のない箇所でも,競技規則条文や段
落の小改正点すべてに注目することが大切である.この文書は,(財)日本ハンドボール
協会平成14年度版競技規則書を刊行(平成13年9月頃を予定)する前に,各条項における
主な改正点(実質的な改正点も記述上の改正点も)を挙げて解説するために翻訳・作成さ
れたものであり,新版競技規則書を読む際にも役に立つであろう.なお,旧競技規則書で
対応する条項を(旧 ○:○)と付記している.

  
  

第1条 コート

 実質的な改正は競技規則1:3(旧1:9)だけで,コート上の一部でラインを引く代わり に,ラインの区画する領域間の色を変えてもよいとしている.もちろんこれは,ラインに 関する従来の用法に対しての単なる選択肢なのである. 記述上の改正においては,ゴールエリアラインと7mライン,4mラインをどのように引か なければならないかについて,より正確な指示を競技規則1:4,6,7(旧1:3,5,6)に 記載した.ハンドボールのコートやゴールの架設責任者への手助けとして,より詳細な 「ガイドライン」を競技規則書の巻末に収めている.しかし,このガイドラインは総合規 則には含めない.

第2条 競技時間,終了合図,タイムアウト

 この条項(そしてこれに関する競技規則解釈も)については,実質的な改正点と構成や 用語の改正点が幾つかある.  この条項を,競技時間(2:1 〜 2:2),終了の合図(2:3 〜 2:7),タイムアウト (2:8 〜 2:10)の3セクションに分けている.  実質的な改正の第1点として,競技規則2:2(旧2:7)で,各延長戦における5分ずつの 前後半の間に1分の休憩を設けると記載している.サイドを交代するのにどうしても時間 が少々かかるし,このようにすれば短時間の戦術的議論のチャンスをチームに与えること にもなる.  必ずタイムアウトをとらなければならない状況の一覧を,競技規則2:8(新条項)にま とめた.2分間の退場としたとき,レフェリーは必ずタイムアウトをとらなければならな いと指示している.これは,判定に際して状況をより平穏で明快なものにし,特にどちら のプレーヤーを退場とするのかについて疑念を抱かせないよう意図したものである.一方 で,タイムアウトをとるかどうかについて,レフェリーは主観的な判断を持ち込む必要が なくなる.  競技規則解釈2(新)は,競技規則2:8(新条項)に関連している.レフェリーが「原 則として」タイムアウトをとるべき状況の類のものをここに記載しており,特定の状況に おいてタイムアウトをとるかどうかを決定するとき,「タイムアウトをとらずに競技を中 断することで,一方のチームに不当な不利益が生じないかどうかを,レフェリーはまず最 初に考えなければならない」と述べている.  競技規則2:10(新条項)には,チームタイムアウトに関する基本的な規定を記載して いる.競技規則解釈3(新)でその手順を詳述している.いつチームはタイムアウトをも らえるのかについて,ここで規則はかなり簡単になっていることに注目しなければならな い.チームがボールを所持していれば,チームタイムアウトを請求するとすぐにもらえる のである.さらに,チームタイムアウトを請求するときには必ず「グリーンカード」を使 用しなければならないと明記している.

第3条 ボール

 この条項では実質的な改正が2項目ある.まず,2号球の最大重量を下げ(400 → 375g), 1号球の最大重量と最小重量を規定している.  第2の変更点として,レフェリーは時間を節約できると考えれば,または他の理由で望 ましいと判断すれば,いつでも予備のボールを競技に使用できるというものである(現行 の規定では,元のボールがもはや使用できない場合に限って許されていることである). 元のボールをすぐに戻せないという状況はそれほど頻繁には起こらないと思われるので, これは小さな改正である.たとえ元のボールが「もはや使用できない」とは言えない状態 であっても,レフェリーが適切であると判断すれば,いつでもボールを交換できる権利を レフェリーは有していることを明確にするのが,この改正の主目的なのである.

第4条 チーム,交代,服装

 記述の都合上,この長い条項をより明快にするため,チーム構成(4:1 〜 4:3),交 代と不正入場(4:4 〜 4:6),服装と外傷(4:7 〜 4:11)の3セクションに分け,さ らに個々の規定が1つの特定の項目を扱うよう合理的なものにしている.  競技規則4:5〜6で,不正交代や不正入場のために競技が中断した場合,通常はフリー スローによって再開することを指示している.しかしながら,同時に競技規則解釈9(新) を参照する必要があり,防御側チームの違反により明らかな得点チャンスを妨害された場 合の7mスローに関する規定をそこで説明している.  競技規則4:10(新条項)は,プレーヤーが出血している(した)場合どのように対処 すべきかについて初めて規定したものである.規定は慣例の処置に一致するものであるが, このような状況を規定しておくことが大切であると思われる.ユニホームが充分にきれい になっているかどうかを,レフェリーは常識的に判断しなければならない.多量の血液が 付着して拭いきれないためにユニホームを交換する必要が生じた場合,たとえ番号の変更 を余儀なくされてもレフェリーはプレーヤーのユニホーム交換を認めなければならない (番号の変更に関する特定の状況における特別規定を認める必要がある).  競技規則4:11(旧4:4)において,重要な改正がある.怪我をしたプレーヤーを救護 するため,タイムアウトをとってコートへの入場を許可するジェスチャーをレフェリーが した場合,現行では両チームの全プレーヤーと全チーム役員に入場を許可している.これ を,入場できるのは怪我をしたチームの2名(チーム役員あるいはプレーヤー)に限ると いうように改正している.他のプレーヤーやチーム役員はコートに入場できない.  このような中断の間,プレーヤーは自分のチーム役員と話をするために夫々のベンチに 近づいてもよいが,タイムアウトが終わるとすぐに競技を再開できるよう用意をしなけれ ばならない.いかなる遅延もスポーツマンシップに反する行為とみなさなければならない. さらに,チームタイムアウトの場合と違って,交代に関する規定は完全に発効しているた め,プレーヤーはこの規定に違反しないよう注意しなければならない.

第5条 ゴールキーパー

 ボールをサイドラインやゴールラインの外に出したプレーヤーの意図を判断するのは望 ましくないと思われるので,旧競技規則6:7c,7:9とともに,旧競技規則5:7を削除し ている.フリースローを判定しなければならない状況を同定しようとするよりも,このよ うな全状況においてスローインを判定する方がより簡単な解決方法である.  新競技規則5:9〜10(旧5:11〜12)において,ゴールキーパーがコントロールしたボ ールを自分のゴールエリアに持ち込む,あるいはゴールエリア内にいて外側の床にあるボ ールを取り込んだ場合,レフェリーはフリースローを与えなければならないとはっきり規 定している.明らかな得点チャンスと少しも関係のない状況としては,旧競技規則5:11 〜12に規定されている7mスローとするより,この方がはるかに適切な結果であろう.  フリースローの実施規定における可能な改正についての議論と関連して,競技規則5:3 (旧5:4)を再検討した.規定の表現は変更しないが,ゴールエリアライン外の床にゴー ルキーパーの身体のどこか一部が触れた瞬間に,規定ではフリースローを実施してよいと 結論づけている.すなわち,スローを行う前に完全にゴールエリアを離れなければならな い,と強要する必要はないということである.

第6条 ゴールエリア

 競技規則6:5には重要な改正がある.ゴールキーパーが自分のゴールエリアでボールを コントロールしている(コート外に出ていないボールをキャッチした,あるいは拾い上げ た)状況は,(相手またはゴールキーパーが最後に触れた)ボールがアウターゴールライ ンを越えた状況と同等に扱う.この双方の状況は競技規則第12条の下,ゴールキーパース ローへと続くのである.  言い換えると,ゴールキーパーがボールをコントロールしたとき,ボールは技術的に 「競技中断」の状態にあるとみなす.たとえば,ボールをコントロールした後は,ゴール キーパーがボールをこぼしてゴールに入れてしまうという「自殺点」はなくなるというこ とを意味する.同様に,ゴールキーパーがボールをコントロールした瞬間に,そのゴール キーパー側のチームの不正交代が起こっても,相手のフリースローではなくゴールキーパ ースローで競技を再開する.  競技規則6:7bは,上記の競技規則5:9〜10(旧5:11〜12)と同様に改正する.プレー ヤーが自分のゴールエリア内にボールを入れ,ゴールキーパーがそのボールに触れたとき, レフェリーは(7mスローではなく)フリースローを与える.理論的根拠は同じである.つ まり旧競技規則における判定は過重であり,しかも状況は明らかな得点チャンスと全く関 係がない.しかしながら,このような改正後は,防御側が自分のゴールエリアにボールを 入れた場合には,レフェリーは必ずこの規定を厳密に適用してそのチームにボールを所持 させないよう求められることになる.故意ではなく(たとえば,ボールをコントロールし ないで全く偶然に逸れて)ボールがゴールエリアに入った場合のみ,競技規則6:6を適用 (ゴールキーパースローにより競技を続行)しなければならない.  6:2cにおける改正は,規定を明確にすることを単に企図したものである.特にゴール エリア内での防御活動で明らかな得点チャンスを妨害した場合,7mスローを判定しなけれ ばならないと決めている.

第7条 ボールの扱い方,パッシブプレー

 ここでは,パッシブプレーに焦点を合わせており,他には改正していない(上述のとお り,旧競技規則7:9を削除する点を除いて).  パッシブプレーに関する旧競技規則7:10を2つの規定に分けている.新競技規則7:10 では基本原理とパッシブプレーの禁止を規定している.パッシブプレーは結局ボールの所 持を失うことになると記載している.競技規則7:11(新条項)は「予告ジェスチャー」 の概念を取り扱っている.  パッシブプレーの正しい判定に関する指針を,手順の教示とともに,競技規則解釈4 (新)に包括して規定している.チームとレフェリーの双方にとって大変重要な解釈をこ こに呈示している.

第8条 違反,スポーツマンシップに反する行為

 ここでの改正は,条項の構成の合理化という,ほとんど全く記述上のものである.これ まで「許される行為」と「許されない行為」として記載されてきたもの(8:1〜2);段 階的罰則につながる違反とスポーツマンシップに反する行為(8:3〜4);「相手に危害を 及ぼすような行為」と「著しくスポーツマンシップに反する行為」で,すなわち共に失格 となるもの(8:5〜6);暴力行為に対する処置(8:7),この定義を旧競技規則第17条か ら8:7に移し,より特定の状況に限定;(フリースローか7mスローによる)競技の再開方 法(8:8),としている.  競技規則8:2の「注」は削除している.「攻撃側の違反」のうち,これはたった2つの 特定の状況に関する,すなわち走って,あるいはジャンプして防御側にぶつかるというも のである.攻撃側の違反は8:2b〜dに列挙しているように多様な形態で生じうるので, 「注」のように偏狭な記載は不適当と考えた.しかし,プレーヤーが走って,あるいはジ ャンプして防御側にぶつかるという特定の状況においては,「防御側の正当な間合い」や 「防御側が前方に移動中でないこと」といった判定基準を今後も用いていく.

第9条 得点

 改正なし.

第10条 スローオフ

 競技規則10:3で実質的な改正が2つある.2つとも,1997年に導入された迅速なスロー オフの実施規定をより頻繁に活用するよう,両チームに奨励することを意図したものであ る.(1) 少なくともスローを行うプレーヤーの片足は,センターラインを踏んでいなけれ ばならないが,もはやそのプレーヤーはちょうど真ん中に立つことを気にかける必要はな く(特に,この地点は常にマークされているわけではないので),左右1.5mを許容範囲と する(コート中央で行うフリースローの場合に似せて).(2) スローを行うプレーヤーの 味方のプレーヤーはレフェリーの合図後,すぐに移動することが許される,つまりボール を投げるまで待たなくてよいのである.これは,スローの実施に関する一般原則の例外と なる.

第11条 スローイン

 改正なし.

第12条 ゴールキーパースロー

 上述の競技規則6:5で説明した改正に伴って,少し記述上の改正を加えている.

第13条 フリースロー

 特に構成や順序,そして各構成内容をどの条項に振り分けるかについて,この条項には 大幅な記述上の改正がある.競技規則13:1〜5(新条項)にはフリースローの判定に関す る様々な状況を記載しており,競技規則13:6〜9(新条項)ではフリースローの実施につ いて取り扱っている.  新競技規則13:1は,違反の後にフリースローで競技を再開しなければならないと他の 条項で規定している状況を,簡便に一覧としたものである.  競技規則13:2(新条項)では,「アドバンテージルール」を適用し,フリースローを 判定しなくてもチームがボールを所持し続けられるならば,競技を続行させるという概念 を述べている.また,攻撃側チームの違反の直後に防御側チームがボールを所持した場合, レフェリーはフリースローの判定をしてはならないと記載している.  競技規則13:4(新条項)では,たとえ規則違反がなくても競技の再開方法としてフリ ースローを与える状況について記載している.この種の状況のうち2つがレフェリースロ ーの廃止に関連している.ボールが天井(またはコート上方の付属設備)に当たった場合 には,最後にボールに触れたプレーヤーの相手チームに,レフェリーは即座にフリースロ ーを与える.同様に,仮に違反がなかったとしても競技が中断し,どちらのチームもボー ルを所持していない場合には,最後にボールを所持していたチームにフリースローを与え る.  競技規則13:6(新条項)ではフリースローを行う場所について,特に違反の起こった 地点からフリースローを行ってはならない状況について詳述している.

第14条 7mスロー

 この条項は,上述の競技規則第13条で呈示したことと同様に構成している.競技規則 14:1〜3(新条項)では7mスローの判定に関して記載しており,競技規則14:4〜10(新 条項)は7mスローの実施に関連する問題を網羅している.  競技規則14:1で,7mスローを判定しなければならない状況について説明している.こ れは競技規則第5,6,7条における改正に対応するものであり,すなわち「明らかな得点 チャンス」が妨害された状況においてのみ7mスローを判定するよう,条項を合理化した.  初めてのことであるが,「明らかな得点チャンス」の定義を競技規則書に記載している. しかしながら,定義は長く,さらに詳述しなければならないため,競技規則14:1自身の 中ではなく,競技規則解釈8(新)に別掲している.【非常に重要】この定義を拡大して いる.長年の間,この「成文化されていない」定義には2種類の状況が含まれていた.つ まり(1) 相手のゴールエリアラインのところで,ボールと身体をコントロールしたプレー ヤーがゴールキーパーのみと対峙している,(2) ボールをドリブルしてコントロールしな がら,プレーヤーが相手のゴールキーパーに向かって独走して逆襲に転じている,という 2つの状況である.  この定義が原因となって,上述のような状況において攻撃側プレーヤーがボールをキャ ッチする直前に,防御側プレーヤーが違反しようとしていることが,近年ますます明白に なってきた.このような策略を排除するために,「明らかな得点チャンス」の定義を広げ, 第3のシナリオ(筋書き)として次のような状況をきちんと含めている.すなわち,プレ ーヤーがまさにボールをキャッチしようとしているが,違反されたために,ボールをキャ ッチして(次の瞬間には)従来の明らかな得点チャンスに至ることができなかった場合で ある.第4のシナリオとして,ゴールキーパーが自分のゴールエリアを離れ,相手がボー ルを得た状況も定義に含める.違反されなければプレーヤーは無人のゴールに明らかにボ ールを投げ入れることができたであろうという状況をレフェリーが確信した場合,このよ うな状況も「明らかな得点チャンス」の定義に当てはめる.さらにまた,競技規則解釈8 (新)で,より詳細で正確に表現していることを解ってもらえるはずである.  競技規則14:6(旧14:5)において,この条項の意図をはっきりさせている.つまり, 7mスローを行った後,ボールが相手かゴールに触れるまで,スローを行ったプレーヤーも その味方のプレーヤーもボールに触れることはできない.しかしながら,たとえばスロー を行ったプレーヤーがボールを落とした場合,あるいは7mスローの実施に際して何らかの 不正があった場合,相手はすぐにボールに触れてもよいのである.これまでの表現ではこ のことが明確にされておらず,アドバンテージを適用する代わりにレフェリーは防御側に フリースローをすぐに与えなければならないことを意味している.  競技規則14:10(新条項)で,相手が7mスローの実施を準備できているときには,控え のゴールキーパーと交代することを(少し修正して)禁止している.これまで,このこと は競技規則解釈に記述されていた.

(旧)第15条 レフェリースロー

 競技規則13:4(新条項)のところで説明したように,レフェリースローを廃止する. フリースローの判定に関して説明している13:4(新条項)にあるような状況に加え, (理論的に)存在するレフェリースローの要因のひとつについて説明しておく必要がある. 旧競技規則では「両チームのプレーヤーがコート上で同時に違反をした」場合には,レフ ェリースローを判定しなければならないと記載されている.レフェリースローを廃止し, 滅多に適用しないこの規定を削除したことに伴い,どちらのチームが先に違反したかをレ フェリーが決定することになる.相手にフリースローを与える

(新)第15条( = 旧第16条) スローの実施に関する一般的な指示

 この条項ではごくわずかの記述上の改正のみを行い,条項の構成は改正していない.競 技規則15:3(旧16:3)を簡略化し,レフェリーの合図の後にスローを行わなければなら ない状況をより明確にしている.

(新)第16条( = 旧第17条) 罰則

 各規定相互および個々の規定内で,より明白な概略と内容のより論理的な配置を企図し て,この条項では重要で実質的な改正と,幾多の記述上の改正を行っている.  実質的な改正の1つを競技規則16:12(新条項)で取り扱っている.同じ状況において, 個人に対してはただ1つの罰則しか与えることができないという従来の原則に例外を付す ものである.レフェリーは次のような方法で柔軟に対応する.たった今2分間の退場ある いは失格となったプレーヤーが,競技の再開前にスポーツマンシップに反する行為をした 場合,そのプレーヤーはさらに2分間の退場を付加される(結果的に4分間の退場となる). 現行では,失格とするより他ないケースである.新競技規則では,著しくスポーツマンシ ップに反する行為に対処するために失格を残しておかなければならない.プレーヤーが 「コートから出ていく(退場する)途中に」このような理由で失格となれば,この場合に もコート上のプレーヤーの数が4分間減らされることになる.  その他の大改正は,競技規則16:3c(旧17:3c),16:3d(新条項),16:6b(旧17:5) に記載している(幾分「隠れ」てはいるが).プレーヤーへの段階的罰則,つまり3回ま での2分間の退場という通常規定を,コート外でのスポーツマンシップに反する行為に対 しても適用すると,この条項で規定している(換言すると,即座に失格となるのは,すで に警告または退場を受けていてベンチにいるプレーヤーにおける,もはや単なるひとつの 結果ではない).同様に,チーム役員によるスポーツマンシップに反する行為に対する罰 則についても,「イエローカード」と失格の間に,2分間の退場を1回挿み込む.「イエロ ーカード」の場合と全く同様に,個々ではなく,そのチームの役員全員を合わせて高々1 回までの退場を適用する.この2分間の退場はチーム役員がベンチから離れなければなら ないのではなく,チームはコート上のプレーヤーの数を2分間減らさなければならないこ とを意味しているのである.もちろん,これまでと同様,著しくスポーツマンシップに反 する行為に対しては,すべて即座に失格としなければならない.  失格に関する報告書の提出を試合後レフェリーに要請する特定の状況を,競技規則16:8 (第4段落)(新条項)で明確に記載しており,何らかの処分を追加するための論拠をこ のようにして当該の裁定委員会に提出する.この規定を忠実に遵守することを各国協会に 強制する.

(新)第17条( = 旧第18条) レフェリー

 この条項には幾つかの記述上の改正がある.たとえば,「第1」および「第2」レフェリ ーという指示は全て廃止し,また,提唱されているコートレフェリーとゴールレフェリー の任務分担の一覧は,競技規則書というものの内容に相応しくないため削除している.  黒色のレフェリーウェアに関する表現も改正している.他の色のレフェリーウェアを着 用する機会が増えたことに伴い,黒色をレフェリー用に「取っておく」のではなく,黒は 「本来レフェリーのため」の色であると規定する.チームは落胆するかもしれないが,黒 色のユニホームの着用を禁止してはおらず,特定の競技においてレフェリーは色の選択に 融通がきくようにしておかなければならないという意味である.  競技規則17:8(旧18:9)には重要な改正がある.両レフェリーが違反に対して笛を吹 き,どちらのチームのボール所持とするかについて2人の判定が異なった場合,現行では コートレフェリーの判定を採用することになっている.この杓子定規な方法は両レフェリ ーがどうしても相容れられない場合のみに限定し,本筋としては手短に互いに協議して合 意の結果の判定を採用することにする

(新)第18条( = 旧第19条) タイムキーパー,スコアラー

 ここでの改正は,タイムキーパーとスコアラーに関する,あまりにも詳細な(そして部 分的には誤った)指示を削除しただけである.

ジェスチャー

 もちろんレフェリースローのジェスチャーを削除している.タイムアウト中にコートへ の入場を許可されるのは怪我をしたチームの2名に限られるが,そのジェスチャーは変更 しない. ゴールキーパースローのジェスチャーはゴールキーパーがゴールエリア内でボールをコン トロールした場合にも原則として用いられることに注目しておかなければならない.しか しながら,特にゴールキーパースローとチームタイムアウトにはもはや関係がないので, 以前ほど頻繁にこのジェスチャーを用いる必要はない. ジェスチャーの用法に関する一般的なガイドラインを刷新している.すなわち,どのジェ スチャーは必須で,どのジェスチャーは特定の状況においてレフェリーが適切と判断して 用いるべきかを,より明確に表している.

競技規則解釈

 大まかに言って,現行の競技規則解釈のほとんどを条文に統合するか,削除している. その代わりに,昨今より重要性の増してきたトピック(たとえばパッシブプレーやスロー オフ,「明らかな得点チャンス」の定義)に関連する競技規則解釈を幾つか新作している. この競技規則解釈の多くは,これに関連する特定の条項に関して以前から議論してきたも のである.

交代地域規程

 IHF主催大会の競技規程では,特にチームのベンチをセンターラインから3.5m離れたと ころから設置するよう,ここで記載している.現状が許せば,あらゆるレベルの競技でも これを実施するよう強く勧告もしている. 交代地域に関する新しい規定は他にないが,幾つかの実情を本文に明記している.自分の ベンチ前で歩いたり,立ち止まったり,ひざまずいたりできるチーム役員は,各チーム一 度に1名だけである.さらに,チーム役員が自分のベンチの端を越えてコートのコーナー の方へ移動することは許されない.

コートとゴールに関するガイドライン

 競技用具,正確な測定,ペイントといったコートの基本的構築に関わる人たちの便宜を 図るため,この本文を競技規則書に掲載しているが,この本文は総合規則の一部でななく, 「規程」としての効力はない.例外的な状況においては,チームもレフェリーもこの本文 を参照しなければならない.