<機関誌2012年1・2月号巻頭言>


「行け! しなやか日本!!」



                (財)日本ハンドボール協会副会長      多田 博 


kantogen-1202
 私は、昨年12月2日から18日までブラジルで開催された第20回女子世界選手権に日本代
表チームと一緒に行って参りました。

 最終結果は、優勝:ノルウェー、2位:フランス、3位:スペイン、4位:デンマーク
と、これ迄強いと言われた本命が順当な結果を収めています。しかし、今回の大会を通じ
大きな変化のうねりがあります。それは、ハンドボール新興国の大幅な進化です。アフリ
カ大陸より決勝トーナメント参加が2か国、特にアンゴラは予選リーグで、ドイツ、アイ
スランドを破り、決勝トーナメントでも韓国を破りベスト8進出でした。チュニジアも予
選リーグで敗退しましたが、フランスとは好試合をし、ブラジル、日本とは一点差でした。
又、アメリカ大陸では、2016年オリンピック開催国のブラジルが、予選リーグではフラン
スを破り全勝で決勝トーナメントに進み、スペインに一点差で敗退、5位に入賞しています。
それに比較し、アジア大陸は、韓国、日本が決勝トーナメントには進みましたが、ベスト
8に残れませんでした。間違いなく新興国のハンドボール進化のスピードが増して、ヨー
ロッパ勢との差を大きく縮めています。上記3か国の共通点は、選手たちがデンマーク、
スペイン、フランスなどのプロチームに所属し、技術、情報を体得して来ていることが挙
げられます。この流れからアジアが取り残されていっていることは否めません。日本協会
としても大きな検討課題の一つと思います。

 一方、我が日本代表チームの今回の印象は一言で“しなやか”でした。世界選手権が24
か国制になってから初の決勝トーナメントへ進みました。決勝トーナメントの前でもハー
ドな練習が続きましたが、選手は明るく元気一杯でした。ボールを使っての練習だけでな
く、筋トレにも励んでいました。選手が重いバーベルを軽々と上げるのを見て、女子ハン
ドボールプレイヤーも変わってきたのを実感しました。

 決勝トーナメントでの対戦相手デンマークの選手は、大型で又シュートも威力が有りま
したが、日本の守備は相手のエース達に素早く詰め、キーパーも連続のナイスプレーで連
続得点を許さず、相手が剛の攻めに対し柔らかく包み込みました。一方、攻めては威力は
劣ってもスピードのある正確なシュートを決め、まさに“しなやか”なハンドボールで対
抗しましたが、惜しくも延長で敗戦となりました。

 日本代表チームは良くやったと思います。キャプテンの藤井選手が攻撃の中心となり、
全員での“しなやか”な防御のチームでしたが、今回の一番の功労者として、若松選手を
挙げたいと思います。試合前の練習では、大きな声を上げ元気一杯皆の中心となり、試合
中はビデオ係を引き受け、試合後もチームの為に庶務係となり、次回大会以降、試合で活
躍してくれることを期待しています。本当に良いチームでした。

 日本代表は今回歴史を作ることは出来ませんでしたが、間違いなく風をおこしました。
5月のオリンピック最終予選への確かな手応えを感じました。

 今の日本代表はオリンピックに出場し、上位を狙える位置にあると思わせるに十分な世
界選手権出場でした。動きが素早くなめらかで柔らかい女子日本代表の戦い方を見て、
“しなやか”という言葉が一番あてはまると感じました。

 行け!しなやか日本!!「女子日本代表」



  (財)日本ハンドボール協会機関誌「ハンドボール」2012年1・2月号より転載