<機関誌2009年6・7月号巻頭言>


「世界に通用するハンドボールを目指して」



                   (財)日本ハンドボール協会副会長  多田 博 


kantogen-0907
 5月6日に開催された日本対韓国の試合を観戦いたしました。

 女子は白熱した好ゲームで最後までチームワークを崩さず基本に忠実なプレーで総合力
を発揮した日本の勝利となりましたが、残念ながら男子は個人技と総合力に勝る韓国チー
ムに完敗でした。その結果、韓国との対戦成績は、男子43戦12勝29敗2分、女子44戦5勝38
敗1分となりました。

 試合前に山下副会長から「ライバルというのは勝ったり負けたりする間柄で、韓国をラ
イバルというのは少しおかしいのではないか」との話まであったことを考えると、今回の
女子の勝利は“歴史的快挙”とも言え、次期ロンドンオリンピックへ向けての貴重な第一
歩と考えられます。

 一方、男子は序盤こそ競り合ったものの、選手諸君の頑張りもむなしく大敗し、体力的・
技術的な実力差が浮き彫りになりました。ただ、若手プレーヤーの可能性が垣間見られた
ことは、次の目標への収穫でした。

 さて、今現在、日本のハンドボールは世界に通用するとは言えません。アジアの中にお
いてさえ常に上位グループにいるわけでもありません。

 現状では、極めて一部の選手の能力やキャラクターが賞賛されることはあっても、ハン
ドボール全体が国民に広く受け入れられているわけではありません。世界大会、オリンピ
ック等の国際試合において日本チームが大活躍することを、日本のハンドボール関係者、
ハンドボールファン、皆が待ち望んでいます。それは、日本代表チームが活躍すれば日本
のハンドボールの普及、発展さらにサポーターの拡大につながることを皆が知っているか
らです。もちろん、日本協会関係者も十分自覚しています。すなわち、日本代表チームが
国際的に活躍すれば、普及の面でも、マーケティングの面でも、選手の待遇面でも、その
他色々な面で、今とは大きく変化することでしょう。

 ハンドボールに関係している我々は、ハンドボールが観戦して本当に面白く、自分でプ
レーするともっと楽しいことを知っていますが、世間的にはまだそこまで認知されていま
せん。他の人気あるスポーツとは受け入れの度合いが違います。この課題を解決するには、
日本のハンドボールが世界に通用する実力をつけることです。国を代表する選手達で争わ
れる国際試合で勝ってゆかねばなりません。

 そのために、日本ハンドボール協会は何をなすべきかが大きな課題です。川上専務理事
の「協会の全知全能総力をもって、ナショナルチームの強化に力を注ぐ」との提言は、ま
さにその答えだと考えます。日本協会をはじめ日本ハンドボール界全体が一致団結して、
ベクトルをその方向に合わせると、色々な課題がハッキリ見えてくるでしょう。すなわち、
ハンドボール協会の各本部や委員会が、最終的に選手強化につながる方向で、それぞれの
役割を果たす必要があります。

 ところで、これからの2年は、何としてもロンドンオリンピックの出場権を取得するこ
とが第一目標でしょう。

 もちろん、代表選手諸君一人ひとりが心・技・体を鍛え、また監督が選手個人の力を最
大限発揮させ、日本独自の強靭なチーム力を引き出すことがオリンピック出場には一番重
要です。同時に、ハンドボール協会が強化という命題達成に向けて、それぞれの部門で問
題点を一つ一つ解決し、全員一丸となり一体感を持って対応することが重要だと感じてい
ます。

 一方、選手諸君は日本の代表であるという強い自覚と責任感を感じて欲しいと思います。
日本のハンドボール界の頂点に立つ者のみが代表選手として選ばれており、ハンドボール
に関係する人もしない人も皆、選手の一挙一動を見守っています。オリンピック出場とい
う大きな目標を達成した時に賞賛されるのは、選手であり、監督です。私達協会役員は、
この目標が達成され、皆と一緒に喜べるように精一杯支援してまいります。

 私は、日本ハンドボール協会の一員として、日本のハンドボールを世界に通用する段階
にレベルアップさせるぺく、皆様と一緒に尽力する所存です。

 今後ともよろしくお願いいたします。



  (財)日本ハンドボール協会機関誌「ハンドボール」2009年6・7月号より転載