<機関誌2006年7月号巻頭言>


女子強化の夢を叶えるために



                (財)日本ハンドボール協会強化副本部長   樫塚 正一

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 平成18年6月にサッカーWORLD CUP が開催されました。サッカーファンもスポーツメデ
ィアも日本チームの活躍に期待を寄せています。この様な応援や支援は、チームにとって
も選手にも戦う前のメンタルな分野の強い支えになると推測しています。

 ハンドボール競技も来年平成19年夏には、オリンピック予選が日本(男子)と韓国(女子)
で開催されることが決定しました。前回の予選では出場権をほぼ手中に入れながら最後の
1点差で出場することが叶わなかった記憶が鮮明に残っています。その後、強化部には蒲
生強化本部長を中心とする新体制が形成され、新しい構想の強化を作り出しています。女
子強化部もナショナルチームに初めてデンマークから外国人監督を迎え、ヨーロッパスタ
イルの練習を取り入れた強化が進み1年が経過しました。

 監督Bert Bouwer率いる新チームは、昨年ロシアで開催された第17回女子世界選手権に
参加し、世界でのランキングを確認してきています。1年の強化経緯からは戦術に関する
考え方や取り組み方は変わったものの、戦績からみれば具体的な成果には届いていないと
考えなけれぼなりません。今日女子部の強化を図ろうとする環境には厳しい状況が伺えま
す。女子の歴史を顧みると1976年第21回モントリオールオリンピックに井薫監督が出場し
て以来、参加した記録は存在しません。また、女子世界選手権大会も1962年第2回ルーマ
ニア大会から2005年第17回ロシア大会までの参加記録の中、過去5回の戦績をみればラン
キング16位〜20位の戦績に終わっています。さらに、昭和51年に発足した日本リーグは昭
和54年に1部(8チーム)、2部(3チーム)とチーム数を増やしていましたが、30周年を迎え
た平成17年は5チームが活動している状況です。チーム数の衰退は、強化と密接な関係に
あることは誰もが知るところと考えます。今後もこの状態が続くことがあるならば、強化
方針の根本的な改革を行わなければ強化部の望みが叶うことは困難と考えています。トッ
プチームのチーム数が増え、大学生、ジュニア層の若い選手達のチームを選択する範囲が
広くなれば、選手層の厚さや色々なスタイルを持った選手をナショナル活動に参加するチ
ャンスを与えることができます。この希望が望める環境を作ることが不可能であれば、少
数の選手を具体的に強化する徹底したトレーニングの改造に着手する決断と勇気を求めら
れると考えています。ジュニア層の強化は順調に進められる環境が見えており、U-23、ナ
ショナルの具体的な強化策が我々スタッフに残されており、強化スタッフはこの部分に英
知を働かさなければ課題を解決することはできません。ナショナルチームに関していえば、
新監督のもと、1年間の強化を図り世界選手権に参加してチームや個人の課題は確認でき
ていると考えています。

 漠然とし抽象的だった「もの」が具体的にみえ「必要」な「セオリー」を確認できる状
態に改善し、今年開催されるアジア大会には成果を残してほしいと同時に、若いジュニア
層に将来の夢が持てる強化に繋げるものでありたいと強化担当として責任を感じておりま
す。


  (財)日本ハンドボール協会機関誌「ハンドボール」2006年7月号より転載