<機関誌2005年3月号巻頭言>


10万人で「北京に絶対出る」



                     (財)日本ハンドボール協会副会長  山下 泉 

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 紀宮さまのご婚約を心からお祝い申し上げます。昨年の国体で吉川市総合体育館にお成
りになり、ハンドボール競技をご観戦されました。私自身、試合の説明役を担当させて頂
いた直後だけにご婚約に一層の喜びを感じています。宮さまは4度目のハンドボール観戦
とのことで、ご造詣も深く、また鋭い質問もあり、私自身緊張いたしましたが、楽しい20
分でした。お幸せをお祈り申し上げます。

 アテネオリンピックでの他競技の日本選手の活躍をテレビで見ながら、我がハンドボー
ルが不出場ということは全国のファンにとり、虚しく淋しい思いをされたことと思います。
唯一ハンドボールの醍醐味を満喫した素晴しい試合をNHK TVで見ることが出来ました。最
終日の韓国対デンマークの女子決勝戦は視聴率17%弱を記録し、多くの日本国民が観たこ
とになります。このゲームを作家の堀江敏幸氏は朝日新聞で次のように掲載しています。

 「力と高さと正確さのデンマークに、鋭い切り込みと舞踏にも似た華麗なポストプレー
で立ち向かう韓国。コートで展開される彼女たちの動き、反応のなんという美しさ。魚群
が一瞬にして向きを変えながら、なおかつ一匹、一匹の動きの個性を殺さない奇蹟の運動
がそこにあった。勝ち負けはどうでもいい。国と国の闘いではなく、技の美しさこそ本質
である」と。テレビは2度の延長の未、7mコンテストで決着をつける寸前に打切られまし
たが、これだけの素晴らしい表現力をもってハンドを分析されました堀江先生に敬意を表
します。

 日本協会は北京オリンピックを目指し、さらなる挑戦をしています。今年からは日本ハ
ンドボール界の切り札である蒲生晴明氏が強化部長に就任しました。国際経験も豊當であ
り、知名度、指導力とも誰もが認めるところです。アテネを目指し、直前3年間は約9億
円の強化資金を投入しましたが、あと一歩のところで残念な結果となりました。巨額な資
金確保が出来たのも日本リーグ企業とその関連企業の支援によるところでした。蒲生新体
制を支援する為に日本協会として強化資金の調達にあらゆる努力は続けなけれぱなりませ
ん。しかし、これまでのように日本リーグ企業に多額の協賛金を期待することは難しく、
又JOCやtoto等の補助金も確実に先細り減少しています。スポンサー協賛もオリンピッ
クに出場していない競技は苦戦をしいられています。

 その打開策として次のことを提案いたします。現在日本代表というチームはナショナル
チームをはじめ5カテゴリー、男女10チームが存在します。男子ジュニアを除いて、世界
選手権への出場権を獲得するまで強化は進み、NTS など着実に成果は上がってきています。
更に強化を活性化させるには各カテゴリーが自立し、自前で強化資金を確保することを期
待しています。ナショナルチームは日本リーグ、U-23、U-19は大学、U-19は高校、U-16は
高校、中学と各連盟で強化体制確立を構築することが理想の組織と考えます。

 強化は日本協会の強化部に任せればよいと、評論家や傍観者にならず、ハンドボール人
口9万2千人(現在日本協会登録数、がんばれ1O万人会サポート会員含む)の総力を挙げて、
現在展開中の「がんばれハンドボール10万人会」を早期に拡大し、北京という最大の目標
を達成する為に支援の輪を拡げて頂きたいと思います。

 これまで優秀な指導者の多くは日本国内の試合に勝つことだけを目標としている人が多
いと聞きます。勿論、国内で勝つことは必要ですが、それでは世界の舞台に立つことはで
きません。本当の役割は世界のトップ選手を育成することです。蒲生新体制を支援する為
に、日本ハンドボール界の全員に何が出来るか再考して欲しいと思います。強化を実行す
る為の色々な条件は急速には据いませんが、不足しているといって行動しなければ何も出
来ません。「北京に絶対出る」と決意した以上、10万人の協力が必要なのです。アジアの
ハンドボールは、日本、韓国、中国などの東アジアと、クウェート、カタールに代表され
る中東諸国とはスポーツに取り組む考え方やルールという世界の基準の判断が著しく相違
しています。いつまでもコートの上で行われるゲームをコート外の人が支配することがあ
ってはなりません。昨年カタールで行われた世界選手権アジア予選のように、中東では王
族の支配力が強いと聞いています。文化や歴史の相違と片付けることは誠に虚しいもので
す。いつ、どこで試合をしても世界のルールが通じるための努力を続けなければ、ハンド
ボールの発展はありません。選手があまりにも可哀想です。

 今後も、日本協会に対するご意見や活性化のアイデアをどしどしお寄せ下さい。


  (財)日本ハンドボール協会機関誌「ハンドボール」2005年3月号より転載