<機関誌2004年10月号巻頭言>


審判員に狩人のような眼力を望む



        (財)日本ハンドボール協会 常務理事  斉藤 実(審判部長)

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 IHF/PRCのスタインバッハ委員長は、最近のハンドボールはラフプレーが非常に
多いことを憂いていると言っておりました。このことは試合の中で何かの形で現れてくる
のではないかと思っておりましたが、それはアテネオリンピックで現れてきました。

 イエローカード3枚に達する前に一発退場を適用したことです。勿論競技期規則16:3
「注」に特別な違反に対しては、プレーヤーが前もって警告となっていなくても、あるい
はチームの警告がまだ合計3回になっていなくても、レフェリーはそのプレーヤーをすぐ
に退場とする権限を有している、とありますので、全く新しいケースではありません。し
かし、IHFの指導は基準を示すために早い段階で3つの警告を出しなさいということで
した。ところが、各国のトレーナー達は3つの警告までは退場がない。だからきつい反則
で臨めという作戦もあったようです。こうした傾向を遮断する意味もあって、一発退場を
適用してきたのではないかと思われます。

 もう一つは、サイドディフェンスがサイドシューターを極力サイドに追うが、最後は接
触を避けていることです。ここでの接触は、攻撃側のチャージング・攻撃側のプッシング・
何も無しに分かれます。ディフェンスがシューターの足を掬ってバランスを崩させたり、
シューター自らがディフェンスに接触して無理にバランスを崩し反則されたように見せか
けた、あるいは、遅れて位置取りをしたにもかかわらず、胸で受けたから相手のチャージ
だとルールを誤解して主張する等、国内でも非常に多いプレーですが、この辺を整理し始
めたのではないかと思われます。

 こうした書き方をしました背景には、アテネオリンピックに参加された渡邊会長が、
IHF/PRCがアテネオリンピックにノミネートした審判員に配布したDVDを入手し
てくださり、いま競技規則研究会と視聴覚委員会で分析をしているということがあります。
DVDのアウトラインは、試合に現れる反則を取り上げ、これは退場とすべし、これは警
告でよしといった具合に60分にわたって解説してあるようです。従いまして、アテネオリ
ンピックはこのDVDに示された基準を適用したと考えられます。このDVDにつきまし
ては日本版に直して関係者に資料として年内にはお渡しできると思います。

 国内における全国大会審判の様子を幾つか見せていただきましたが、幾つか疑問を持た
ざるを得ない判定に出会いました。世界の傾向を知ることもさることながら、我々審判員
は技術か反則かを「狩人のような鋭い眼力」で見抜き、そこに判事や弁護士のような配慮
を加え、ハンドボールの魅力を堪能させるすばらしいゲーム運営を心がけることと、ハン
ドボーラーに正しいルールを教える努力を惜しまないよう期待します。

 ※IHF(International Handball Federation):国際ハンドボール連盟
   PRC(Playing Rules and Refree Commission):競技規則審判委員会


    (財)日本ハンドボール協会機関誌「ハンドボール」2004年10月号より転載