<機関誌2004年5月号巻頭言>


世界を目指すシステムとしてのNTS



            (財)日本ハンドボール協会 参事  蒲生 晴明 
    (競技者育成技術委員会ナショナルトレーニングシステム運営委員長)

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 オリンピックイヤーがスタートしました。我が代表チームは、本戦への出場は叶わな
かったものの、アジア予選でライバル韓国に男女ともにドローと肩を並べました。さら
に、女子は世界選手権へ出場し、男子は4大会振りに世界選手権出場権を大激戦の末、
獲得。この勢いを継続するため、日本協会は活動の柱として、改めて「オリンピックプ
ロジェクト」と「地域振興プロジェクト」を提示しました。このプロジェクトの「柱」
となるのが、NTSです。

 毎年繰り返しになりますが、NTS(ナショナルトレーニングシステム:競技者育成
プログラム)は、「世界をスタンダード」にした「タレント発掘」、「タレント育成」
を目的とした「一貫指導システム」であり、(財)日本ハンドボール協会として全国を
ピラミッドにした発掘・強化・育成・指導・普及システムであります。強化委員会・指
導普及委員会・審判委員会などが企画立案した事業を都道府県協会や各連盟と協力協調
し、NTS(現場)を通して全国へ展開していくシステムであることが重要です。幸い、
昨年から「競技者育成技術委員会」が発足、「分析チーム」が立ち上がり、様々な角度
から世界の流れをキャッチして日本の強化育成に展開していけるようなシステムになっ
てきました。一貫指導システムは、国として中央競技団体が主体性を発揮し、運営管理
していくことが望まれます。世界の強豪国は、このシステムを独自のアイデアを駆使し、
運営する中で、優秀なタレントを発掘・育成しています。当然ながら、競技者を変える
ことが出来るのは「指導者!」だけであり、指導者養成・育成・強化がパラレルに進歩
していかなければ、その成果は期待できません。そして、「学ぶことをやめたら、教え
ることをやめなければならない:サッカーフランス代表監督ルメール氏」を合言葉に、
指導者こそ、常に新しい情報を自身で積極的に取り込み、現場に生かしていただきたい
と思います。

 次に、システムとして運営していく上で重要なのは「財源」です。2000年は日本リー
グチームの支援、2001〜2002年はJOC(国庫)・日本リーグの支援、2003年は、toto
助成をいただきながらの運営をしてきましたが、いつの日か?日本ハンドボール協会の
自己財源で運営していくことが望まれます。2004年度のNTS事業財源は、totoの売り
上げ減によって助成金額が大変厳しく、昨年同様の運営は不可能と思われます。しかし
ながら、将来をにらんだこの事業を停滞させるわけにはいきません。したがって、我々
ハンドボール関係者が積極的にtotoを購入すること、その財源を効率的・効果的に運営
使用すること、そして日本リーグチーム・都道府県協会をはじめ、推薦された指導者選
手・NTS関係者の方々のご支援をいただきながら進めていかなけれはならないと思い
ます。

 (財)日本ハンドボール協会のNTSは、文部科学省やJOCからモデルとして注目
されており、将来への広がりも含めて、関係の皆様のご理解、ご協力、ご支援をよろし
くお願いいたします。


    (財)日本ハンドボール協会機関誌「ハンドボール」2004年5月号より転載