<機関誌2001年12月号巻頭言>


「愛されるハンドボールを目指して」




            (財)日本ハンドボール協会審判部長   斉藤 実
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 過密日程の夏期日程も無事消化し、いよいよ日本リークの開幕、また本年度のそ
れぞれの種別のまとめの大会を迎える季節となりました。特に今夏は第1回のビー
チハンドボール世界選手権大会開催により、また新たな歴史が刻まれました。私は、
ビーチハンドで国の威信を懸けたタイトル戦でありながら、久し振りにコートと観
客席が一体となった爽やかハンドに接した感がしました。もちろん、ビーチハンド
そのものがまだ娯楽性を含んでいることは承知していますが。

 久し振りに爽やかさを感じたということは、各種大会において相変わらずレフェ
リーとプレーヤー・チーム関係者との軋轢が露骨に現れていることにより、そこに
爽やかさが感じられないことが多いためであります。「自チームが勝利するため」
はもちろん承知していますが、「レフェリーで負けた」とかゲーム中の不必要なア
ピール、日本リーグ等で活躍した者がクラブチームと対戦すると、技量やスピード・
筋力の差を見せつけることにより、隠れた粗暴プレーで優位さをつけようとする行
為、それを見つけ退場を命ずると「自分はやってない、知らない」、挙句の果てに
「バレたか」。過去に活躍した、或いは活躍している選手だからこそ爽やかさが欲
しいのです。

 ある県では有力チームの監督があまりに自分本位のクレームをつけるため、審判
のなり手がなくなってしまったとも聞きます。こうした指導者に育てられたプレー
ヤーはどんな人間になっていくのでしょうか。学校関係であれ実業団関係であれ、
指導者は自ら人間性を示し、プレーヤーを教育しなければなりません。この爽やか
さのない状態が続くとファンからソッポを向かれ、「がんばれ10万人会」のサポー
ターも集められません。ファンは、誰が見てもレフェリーのミスであったとしても、
大げさな抗議をせず次のプレーに移っていく感動的な場面が欲しいのではないでし
ょうか。

 今度のルール改正にはプレーヤーに対しては4分間退場があり得ること、またベ
ンチには注意・警告・退場・失格と退場の項が1つ増えたことは、こうした行為へ
の対処とも考えられます。しかし、私達レフェリーは、ルールを大上段に構えよう
とは考えていません。各大会ににおいてレフェリーに要求しているのは、「プレー
ヤーの素晴らしい技術を引き出せ」です。それを徹底するため各大会の前日に研修
会を持ち細部にわたり再確認をしております。また、日本協会としては年1回トッ
プレフェリー研修会を開催しております。これには全国大会に参加するレフェリー
はもちろん、各都道府県のレフェリー・指導者にも参加できるよう案内を出してお
ります。これに積極的に参加していただき、指導者の考え・レフェリーの目等多角
的にルールと技術の研究を行い、日本のハンドボールを発展させる原点とする事と
しています。さらには視聴覚器材とスタッフを充実させ、レフェリーの資質の向上
を図る一助とする予定であります。こうしたレフェリーの努力とプレーヤー・トレ
ーナーの努力が一体となり、オリンピック・世界選手権大会に常時出場させ、多く
のファンから愛されるハンドボールにさせていこうではありませんか。


    (財)日本ハンドボール協会機関誌「ハンドボール」12月号より転載