2005年競技規則変更について

平成17年2月4日

関係者 各位

(財)日本ハンドボール協会
競技本部       
審判部・競技運営部

はじめに

 国際ハンドボール連盟(IHF)においては、本年は4年ごとに実施される競技規則変更の年にあたり、従来の日程と同じく(2005)81日から新競技規則を実施する予定となっています。昨年秋のIHF総会で採択された競技規則改正概要(11項目)をもとに、今はIHF競技規則・審判委員会で新競技規則書の編纂が進められつつある段階です。

 さて、わが国では恒例として、大会年度の関係上、IHFより8ヶ月遅れて翌年41日から新競技規則を実施してきました。しかし、国際舞台でのさらなる躍進を目指すナショナルチームにとって、新競技規則の実施の遅れがデメリットになるのは明らかです。一方、国内の諸大会では新競技規則の不徹底に起因する混乱を極力回避しなければなりません。このような諸般の事情を考慮した上で、国内においてもIHFと同じく本年81日から新競技規則を実施することが(財)日本ハンドボール協会常務理事会で決定されました。したがって、通例よりも特に今回は、正確かつ可及的速やかに新競技規則を全国に浸透させる必要があります。このための第一報として、昨年秋のIHF総会で採択された競技規則改正概要(11項目)を以下にお知らせすることになりました。(この資料は去る130日に東京で開催された全国審判長会議において配布したものです。)

 誤解や混乱が生じないように申し添えておきますが、新競技規則の条文がIHFから公式に発表されたのではなくて、競技規則の主な変更点についての基本的な考え方と方向性が示されたものを情報として公開する、という点に特にご留意ください。

2005年 競技規則変更(IHF総会での採択項目)

1. 競技時間の終了後におけるフリースローの実施について

(24の末尾に以下の段落を追記)

競技時間の終了後(前後半、延長戦を含む)にフリースローを行うときは、特例として、次の2つの制限が加わる。

a) 交代を許されるのは、スローを行うチームのプレーヤー1名だけである。

b) スローを行うチームのプレーヤーは、スローを行うプレーヤーから少なくとも3 m離れなければならない。

理由:競技時間の終了後のフリースローに際して、スローの実施までに狂言のような状態が長く続き、しかも実際に得点に結びつくことも少ない。これは競技の魅力をそぎ、苛立ちの種となっている。

解決策:遅延の原因のひとつは、ディフェンス壁を作るために、防御側チームが背のより高いプレーヤーを起用することにある。このような防御側プレーヤーの交代を禁止する一方で、(スローを行わせたいプレーヤーがベンチに控えている場合に)スローを行うチームに対しては1名のみの交代を許可する。防御側プレーヤーを惑わせようとして、スローを行うプレーヤーの周りに攻撃側プレーヤーが群がることも、遅延の一因となっている。結局のところ、ボールを所持できるのは1名のプレーヤーだけであり、さらに他の攻撃側プレーヤーはボールに関与していないので、このような攻撃側プレーヤーの行為も禁止する。

2. 競技の中断に際して、タイムキーパーに時計を止める権限を与えること

(29)

タイムアウトに際しては、通常、レフェリーが競技時間の中断と再開を決定する。しかし、タイムキーパーが笛を吹いて競技を中断した場合には、タイムキーパーが競技時間を中断することができる。

理由:チームタイムアウトや不正交代のためにタイムキーパーが笛を吹いても、レフェリーやプレーヤーには笛の音が聞こえず、競技が続行されてしまうケースが時折見られる。このような場合では時計は進んだままになっているため、正しい競技時間の計測について混乱と物議をかもし出している。

解決策:タイムキーパーが笛を吹いて競技を中断したときは、タイムキーパーに時計を止める権限を与える。

3. プレーヤーを14名に増員すること

(41)

チームは14名までのプレーヤーで構成される。

理由:4年前、IHFの競技規定として「14名のプレーヤー」を認めることが決定されたが、競技規則書には明記されていなかった。しかし、各国協会の大多数は「治外法権」をうまく活用し、「14名のプレーヤー」を国内大会でも認めていることは明らかである。このように広く支持されている流れに対して逆らい続けるとするならば、IHFにはそれ相応の理由が必要なはずである。

解決策:基本となる競技規則を「14名のプレーヤーを認める」と変更する。

4. 記録用紙へのプレーヤーの未記入が判明した場合の適切な罰則

(43の最終段落を変更)

チーム責任者は、参加資格のあるプレーヤーだけがコートへの入場を許可されるという規定を順守しなければならない。この責務を果たさなかった場合、チーム責任者によるスポーツマンシップに反する行為とみなし、161d163dおよび166bに則って段階的に罰則を適用する。

理由:記録用紙に記載されていないプレーヤーが出場していると分かった場合、当該プレーヤーの失格というあまりにも厳しく、かつ論議を呼ぶ罰則がこれまで適用されてきた。これはチーム管理上のミスであり、失格とすべき他の違反の根拠と比べても、この罰則はあまりにも重すぎる。さらに、ミスをしたのはチーム責任者であり、プレーヤーに罰則を適用するのは根本的に誤りである。プレーヤー各自が記録用紙に記載されていることを確認する必要はないはずである。

解決策:プレーヤーではなくてチーム責任者に対して罰則を適用し、失格ではなくて罰則を段階的に適用する。つまり、それ以前にチーム役員が他の理由でどのような罰則を適用されていたか否かによって、警告・2分間退場・失格のいずれかが適用されるということである。言い換えると、チーム役員がスポーツマンシップに反する行為を繰り返して既に2回も罰則(1回目は警告、2回目は2分間退場)を適用されているといった特殊なケースにおいては、失格が適用されるということである。

5. ピアスの禁止

(49)

ピアスも、プレーヤーが身につけることを禁止する。

理由:他のプレーヤーに危険を及ぼす可能性のある物について、以前より競技規則条文に列挙してきた。より現代的なもの、すなわちピアスについては条文に記載されていない。これに関連するIHF某委員会の意見では、明らかに外から見えるピアス(すなわちユニホームの下に隠れていないもの、または口の中のもの)は危険物として禁止しなければならないという。指輪やイヤリングの場合と同様に、ピアスも取り外すか適切に覆い隠さなければならないと思われる。

解決策:該当する条文の中に、ピアスについても明記する。

6. タイミングが悪ければ、「軽微な」プッシングであっても危険行為となる場合

(85の末尾に【注】として追記)

たとえ身体的衝撃の小さい軽微な違反であったとしても、無防備な相手の不意をつくタイミングで行われた場合は極めて危険であり、しかも重大な結果を招く可能性があることに留意すべきである。特に、プレーヤーがジャンプしている、または走っているときに、このような事象が起こりやすい。これは相手にとって危険そのものであり、一見軽微な身体接触であっても、失格が適切かどうか勘案しなければならない。

(83の第2段落の末尾に追記)

しかし、163【注】に示したように、特別な違反に対しては、プレーヤーが前もって警告となっていなくても、レフェリーはそのプレーヤーをすぐに退場(一発退場)とする権限を有している。押す、走って、またはジャンプして相手にぶつかる、といった違反のうち、怪我を誘発させる危険性のより高いものについては、特に一発退場とすべきである。

理由:競技規則85において、相手に危害を及ぼすような違反について列挙し、これに対しては失格としなければならないと明記している。従来、この条文では、力ずくで甚大な衝撃を与えるような違反(すなわち、強く押す、相手を殴る、足をひっかける、相手を床に引き落とす行為)について記載してきた。残念なことだが、プレーヤーの違反はだんだんと巧みになってきて、(特に、ジャンプしている、または走っている)相手が全く無防備でまさに不意を食らうような瞬間に、小さな衝撃ながらも決定的な打撃を与えるようになった。結果的に、わずかな身体接触によって、相手は受身の態勢を取れないまま床に落下することになる。このような違反行為は未然に防止しなければならず、したがって重い罰則の対象としなければならない。

解決策:このような違反については競技規則85に特記し、プレーヤー/コーチやレフェリーに注意を喚起する。(もちろん、プレーヤー/コーチが倫理的で責任ある態度でプレーすることが先決であろう。) 同様に、競技規則83にも追記する。

7. 各種スロー間の不一致を訂正

(123を全文削除)

ゴールキーパースローをした後に他のプレーヤーがボールに触れるまで、ゴールキーパーは再びボールに触れることができない。

この条文を削除した結果、ゴールキーパースローについても、各種スローの規定(155)に包括されることになる。

155 スローを行ったプレーヤーは、ボールが他のプレーヤー(相手チームの)ゴールに触れるまで、再びボールに触れることはできない。

理由:フリースロー、7 mスロー、スローインおよびスローオフに際して、スローを行ったプレーヤーは(他のプレーヤーがボールに触れる前であっても)相手チームのゴールに当たって跳ね返ってきたボールに触れることが許される。この規則をゴールキーパースローにも適用していなかったのは、条文の単純なミスである。

解決策:ゴールキーパースローに関する条文の整合性を図る。

8. ボールが天井に当たった後の競技再開方法は、フリースローではなくスローイン

(134 cを削除)

(136の第2段落の後半部分を削除)

(111の第2段落として以下を追記)

コート上方の付属設備や天井にボールが触れた場合にもスローインを与える。最後にボールに触れなかったチームがスローインを行う。

(113の第2段落として以下を追記)

天井にボールが触れた後にスローインを行う場合、ボールが天井に触れた位置から近い方のサイドライン上の最も近い地点からスローを行う。

理由:2001年にレフェリースローが廃止された。今では、ボールがコート上方の天井に触れた場合、最後にボールに触れなかったチームのフリースローによって競技を再開している。しかし、フリースローを行うチームが意図はないものの不当な利益を偶然に得てしまう、といったケースが散発しているようである。例えば、防御側プレーヤーが近くに誰もいない状況で、ゴール正面からフリースローを行うケースがある。

解決策:競技の再開方法をフリースローからスローインに変更する。そうすれば、競技再開に向けて両チームは公平に準備態勢を取れるし、ボールが天井に触れてから競技再開までの遅れも生じない。

9. ゴールエリア内における違反の後は、ゴールエリア内からフリースローを実施

(136の第6段落の一部を削除)

「自陣のゴールエリア内からフリースローを行うことはできない」という制限を撤廃する。

(136の第7段落として以下を追記)

ゴールエリア内における違反に対してフリースローが与えられたとき、ゴールキーパーは自陣のゴールエリア内(の任意の場所)からフリースローを行う。このスローの実施に際しては、ゴールキーパースローと同じ規定(122および123)を適用する。したがって、137152、および154の第1段落に記載されている規定は適用しない。

理由:(ゴールエリアへの侵入による場合が典型的であるが)フリースローが与えられたとき、ゴールキーパーはボールを拾いに行き、そしてゴールエリアの直ぐ外側の地点を目指して、およそ1015 mもの距離を走ってゴールエリアを横切るという、つまらない遅れの生じる場面が目立つようになってきた。より簡便な再開方法が望まれる。

解決策:ゴールキーパーがゴールエリア内からフリースローを行うことを禁止しているのは、悪しき伝統であると言われてきた。さらに、手慣れたゴールキーパースローの場合と同じように、何ら制約を特に加えることなくゴールキーパーにスローを行わせるべきである。このように変更しても、不当な利益は全く生じない。

10. 休憩時間中の違反に対しても、競技時間中と同じ方法で罰則を適用

(1613 c, dを削除)

(1613の第1段落の記載を変更)

競技規則161163166169に示した状況のほとんどは、競技時間内に起こった違反に関するものである。この諸規則でいう「競技時間内」とは、延長戦、タイムアウトの時間、および休憩時間を含む。

理由:かつて、ある種の罰則(特にコート上のプレーヤーの数が減らされることにつながるもの)は、競技時間中にコート内で生じた違反に対してのみ適用されていた。このような古い対処法については徐々に変更されてきている。例えば、現在ではベンチにいるプレーヤーに対して2分間退場とすることができるし、チーム役員に対しても2分間退場とすることができ、タイムアウト中やチームタイムアウト中でも通常どおり罰則が適用される。今や、一貫していない罰則適用の方法は、残りひとつだけとなった。すなわち、休憩時間中の罰則はイエローカードかレッドカードのいずれかしかない点である。これは、以前に規定されていたチーム役員への罰則の適用方法におけるジレンマと、まさに同じである。つまり、イエローカードを既に挙げている場合、レフェリーは一気に過酷なレッドカードへとエスカレートするか、それとも性急な行動を避けて「見て見ぬ振り」をするか、極端な処置方法しか選択できないのである。今回の規則変更で、休憩時間中の違反に対する両極端な処置方法のギャップを、うまく埋められるとよいであろう。

解決策:休憩時間中の違反に対しても、競技時間中の違反と同じシステムに則って判定すべきである。つまり、チーム役員(場合によってはプレーヤーも同じ)が既に警告となっているとき、レフェリー(ならびにTD)に(失格ではなくて)2分間退場を適用する余地を与えるということである。

11. 7 mスローの判定に際しては、状況に応じてタイムアウトを宣告

(28 bを削除)

競技規則解釈2で、状況に応じてタイムアウトを取るケースについて記載しており、7 mスローを判定した場合のタイムアウトについてはここに記述を追加する。

理由:何年も前のことであるが、7 mスローの判定に際して多大なる競技時間が浪費されていると判断され、必ずタイムアウトを取った方がより公平であろうということになった。しかし、このようなタイムアウトの多くは無意味であり、むしろ総競技時間の不要な延長を生み出したに過ぎないことが分かってきた。

解決策:ゴールキーパーが交代する場合や一方のチームが明らかに遅延させる場合など、タイムアウトを取る方が適切なケースはあるであろう。しかし、時間浪費の有無についてはレフェリーの常識的な判断に委ねることにし、そして時計が止まらなければ不当に不利益を明らかに被る場合に限ってのみタイムアウトを取る、とすることが最善の解決策であろう。